Amazon Web Services(AWS)やMicrosoftと比べると、今ひとつ勢いが感じられないIBMのクラウド事業。果たしてこれから勢いに乗れるのか。Red Hatの買収が日本の事業にもたらす効果と合わせて、日本IBMの三澤智光 取締役専務執行役員IBMクラウド事業本部長に見解を聞いた。
「企業システムのクラウド化はまさしくこれから」
日本IBMのクラウド事業を担当する三澤氏が先週、メディア向けラウンドテーブルを開き、記者の質問に応じた。ここではその中から、次の2つの質問に対するコメントが興味深かったので、以下にインタビュー形式で紹介しておきたい。
記者の質問に応じる日本IBMの三澤智光 取締役専務執行役員IBMクラウド事業本部長
--IBMのクラウド事業は、シェアで先行するAWSやMicrosoftと比べて、今ひとつ勢いが感じられない。これからどう追撃するのか 。
市場調査の中にはIBMのクラウドに勢いがないように見える結果もあるが、あえて一言申し上げておくと、そうした調査にはIBMが得意とするプライベートホスティング型サービスの実績が入っていない。
それをまずお伝えしておいてこれからの話に入ると、クラウド市場が本格的に拡大していくのはまさしくこれから、というのが私たちの捉え方だ。
なぜ、これからなのか。それは、既存システムによるSoR(System of Record)分野のクラウドへの移行がいよいよ動き始めたと実感しているからだ。これまで、とりわけ日本のエンタープライズ市場では99%の企業システムがオンプレミスのまま推移してきている。その大きな“山”がようやく動き出した。
AWSやMicrosoftのクラウドはこれまで、新しいデジタル技術によるSoE(System of Engagement)分野の需要に応えて成長してきたと見ている。企業でいえばスタートアップが多く、エンタープライズ向けでしかもSoR分野への実績はまだわずかだろう。両社ともエンタープライズ向けでの実績を喧伝しているようだが、内容を見ると規模が小さい。IBMのクラウドではSoRの大規模なシステムのクラウド移行がここにきて相次いでいる。
しかもこれからは、SoRとSoEの両分野が共存するハイブリッド利用やマルチクラウドの需要が高まってくる。エンタープライズ向けにそのしっかりした仕組みを提供できるのはIBMだけだと自負している。