ZDNet Japan編集部の藤本です。いつも記事をご覧いただき誠にありがとうございます。昨日の國谷に続き、編集後記の2回目では「データ分析」に関する動向をまとめたいと思います。
新型コロナウイルス感染症は世界で猛威を振るい続けています。新規感染者数や病床使用率、重症者数など、日々さまざまなデータが政府や自治体などから公開されています。多くの人は、そうした情報を確認しながら毎日の生活を送っているのではないでしょうか。また、コロナ禍で消費者の購買行動が大きく変わりました。外出自粛などに伴いEC(電子商取引)の利用者が急増し、顧客一人ひとりのニーズに応えることが重要になってきています。
コロナ禍においても人工知能(AI)を使った活用事例が見られました。例えば、AIを搭載したカメラで画像解析を行ってビルの入館時にマスクの装着有無を自動で判定したり(参考記事)、ワクチン開発で必要となる遺伝子情報の解析にAIの予測技術を使ったり(参考記事)、実にさまざまなユースケースがありました。業務負担の多い医療現場をAIで支援する取り組みなども加速しています。
その一方で、AI活用やデータ分析を進めるに当たっては、データ管理の重要性がますます高まっています。多くの企業では、さまざまな種類の業務データが地域や部門の単位でそれぞれ異なるシステムに格納されているため、貴重なデータを十分に活用できない状態になっているといいます(参考記事)。そうした問題がデータの活用を妨げ、デジタル変革(DX)を阻害する要因の一つにもなっています。
日本オラクルが実施した調査(参考記事)によると、約7割の企業が「ばらばらでサイロ化されたデータ戦略」の状態で、ビジネスのステークスホルダーが必要とするデータを提供できていないと認めているといいます。また、IDCの調査(参考記事)では、日本企業の回答でデータ分析プロジェクトが目標を達成できなかった最も一般的な理由は「データの品質が十分ではなかった」(40%)で、「データをタイムリーに分析に利用できなかった」(35%)、「分析に欠陥があった」(30%)、「データを分析する人が業務プロセスの流れに沿ってデータを理解する専門知識を持っていなかった」(28%)が続いています。
こうした変化に合わせ、業界の動きも活発化しています。例えば、SalesforceとTableauは両社製品の統合(参考記事)を進めており、CRM(顧客関係管理)とBI(ビジネスインテリジェンス)の連携が進むことで、データの活用が促進されるでしょう。また、Qlik(参考記事)はこの数年でさまざまな企業を買収し、データ基盤としての強化を図っています。BI業界では今後もこうした流れが続くか注目です。
9月にはクラウドベースのデータウェアハウス(DWH)とデータ管理を手掛けるSnowflakeが米ソフトウェア業界で過去最大規模とされる株式新規公開(IPO)を実施しました(参考記事)。上場初日に株価が急騰するなど、市場からの期待の高さが明らかになりました。以前から多くの企業がDWHの構築・運用に取り組んできましたが、今後はクラウドにシフトする動きが加速すると考えられます。
コロナ禍において、以前から続いていたデジタル化の取り組みが加速することは間違いないでしょう。その根幹となるのがデータであり、それを管理する基盤になります。2021年も不透明な状況が続きますが、世の中のデータに基づく意思決定を支えるべく、データ基盤の構築・整備に役立つ情報を提供していきたいと思います。