大手システムインテグレーター(SIer)の2024年度決算が出そろった。9社合計の売り上げ成長率は前期比7.9%増、営業利益は同8.9%増と、順調な推移をみせた。各社とも「旺盛なIT需要だった」とするが、実は売り上げも利益も、成長率は2022年度、2023年度の2桁から1桁に下がっている。25年度の売り上げも1桁成長を予想する。ただし、営業利益は2桁増を見込む。各社の2024年度決算説明会から、取り組み状況や事業環境などをまとめた。

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生産性の低いNTTデータグループ、売り上げの伸びが低いNRI
NTTデータグループの2024年度は、売上高が前期比6.2%増の4兆6387億円、営業利益が同4.6%増の3238億円と1ケタの伸びにとどまった。2023年度は海外事業を展開するNTT Ltdの連結拡大と為替影響などで、売り上げも営業利益も約20%増だったが、2024年度は海外が4%弱増となった。一方、国内の売り上げは約10%増で、特に公共・社会基盤が16%以上、金融が7%超、法人が5%超と着実な伸びを確保する。
営業利益率は0.1ポイント減の7%になる。海外のデータセンター事業の売上高が前期より約30%増の24億3200万ドル、営業利益は約27%増の4億6200万ドルと大きく伸びたものの、投資金額が600万ドル増の約27億600万ドルになる。課題の1つは、生産性の低さにある。1人当たりの営業利益は日本だけなら400万円を超すが、全体では200万円を大きく割り、他社の4分の1から3分の1の水準。NTTデータグループ 代表取締役社長の佐々木裕氏は「デジタルトランスフォーメーション(DX)需要が旺盛で、海外は伸び代がある」と、5月8日のNTTによるNTTデータグループの完全子会社化の会見で語ったが、生産性を飛躍的に向上させる現実的な施策が求められるだろう。
対して、野村総合研究所(NRI)の1人当たりの営業利益は800万円を超す。ASPとアウトソーシングという収益性の高いビジネスを中心に展開していることにある。2024年度の売上収益は前期比3.8%増の7648億円、営業利益は同12%増の1349億円となり、売り上げの成長率が2023年度の5.9%から下がる一方、営業利益の成長率が2023年度の9.6%増から高まり、営業利益率が1.3ポイント押し上げ、17.6%となる。成長が著しいコンサルティングの営業利益率は約28%超など、国内営業利益率が20%を超えるものの、海外事業の厳しい状況が続いている。2025年度の計画は、売上収益が5.9%増の8100億円、営業利益が11.2%増の1500億円を目指す。
代表取締役 社長の柳澤花芽氏は「IT投資需要が強く推移する」と説明会で語り、2025年度は注力領域として、「AIによるビジネス変革」「知的資本への投資による新しいサービスの創出」「人的資本への投資」――などを挙げる。それらをトップラインにどうつなげるのかに注目する。