野村総合研究所(NRI)は3月24日、「認証及びデータ連携サービス基盤を活用した官民サービス連携に関する実証実験」を実施したと発表した。今回の実証実験では、官民連携サービスの利用意向、運営体制のあり方、法制度面での制約事項等を検証したという。
実証実験に参加したのは、NRI、NECビッグローブ、OKI企業年金基金、沖電気工業、ソニー生命保険、日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー(JIS&T)、NEC、野村證券、みずほ銀行、ヤフーの10社および団体。
この実証実験は、経済産業省の「平成21年度 ITとサービスの融合による新市場創出促進事業(デジタル市民生活プロジェクト実証事業)」の一環として実施されたもの。2010年1月から2月にかけて実施され、将来の官民サービス連携のあり方を検討、実証した。
NRIは、認証連携技術に関する実績を生かし、実証実験計画の策定、内容検討、実験の運営管理、認証連携機能も含む実証実験システムの開発などを担当している。今回は、標準化、技術検証を目的として、認証連携に関して国際標準規格であるOpenIDおよびOpenID CX(Contract Exchange)を活用したサービス基盤を構築した。
実証実験では、公共機関や民間企業から紙文書で送付されている公的年金や企業年金を含む金融資産の通知書を電子データで受信、ポータルサイト上でまとめて閲覧、集計できるようにし、その上でファイナンシャルプランナー等にデータを提供して、金融資産の将来設計のアドバイスを受けるというユースケースを想定。モニター参加型の実証実験を行った。
この実験で、官民連携サービスの利用意向、ニーズの高い官民連携サービスや機能、運営体制のあり方、提供・活用のメリット、法制度面での制約事項などについての検証を行い、以下のような成果を得たという。
まず、官民サービス連携のあり方について、実験参加モニターの意識調査の結果、実験ポータルサイトへのログインIDは、「他のポータルサイトや金融機関の会員サイト等で既に利用しているIDを使いたい」という利便性を重視する利用者が多いことが分かった。また、実験ポータルサイト経由での官民各機関、企業からの情報取得、また第三者への情報の提供については、大部分の利用者が複数認証を必要と考えていること、現在紙で受け取っている官民各機関、企業からの通知物について、その種類を問わず半数以上の利用者が電子的な交付を期待していること、官民が連携したサービスについて、約7割の利用者が積極的な利用意向を示していることが分かったとしている。
また、官民サービス連携により創出される4つのサービスモデルとして、ライフプランニングサービス、公金決済サービス、本人の(情報保有機関への)登録情報のワンストップ管理サービス、本人の実在性・属性証明サービスを提示したという。
標準化、技術検証については、OpenIDを活用したOpenIDプロバイダー(OP)間での認証連携・ID紐付けモデルを実現した。具体的には、官民連携サービスを提供するポータルサイトにて、OpenID対応している民間プロバイダー発行ID(Yahoo! JAPAN ID、BIGLOBE ID)と情報保有機関(行政機関、JIS&T、企業年金基金などを想定)とのOP間連携を実現させている。
これにより、ポータルサイトでは Yahoo! JAPAN IDやBIGLOBE IDでログインでき、情報保有機関からの通知物がポータルサイト上で一元的に集約されて管理できる。また、OpenID CX通信を採用し、OpenIDの認証連携結果を踏まえた契約ベースによる安全なデータ連携規格を実証。さらに、OpenIDによる認証連携の中で、認証レベルを上げる手段としてワンタイムパスワード認証の組み込みも行い、年金データの配信インターフェースの構造化(XML)案を作成したという。
同実証実験の結果に関する詳細は、2010年度第1四半期中に経済産業省のサイトで公開される予定だ。