(前編はこちらです)
部長、クラウドの前に考えるべきことがあります
「でもさぁ、ウチってご存知のように、まだ倉庫管理のところでオフコン持っているでしょう? それに、ウチの伝統事業の受発注は未だにメインフレームで動かしているし、会計周りをやってるERPだって2年後のバージョンアップなんて、前に評価してもらった通り、物凄いことになるじゃない? オープン系のインフラのアウトソーシングだって、アウトソーシングのやり方がおかしいって言われたじゃない? そういうの、今までの話だと、クラウドで解決できないよねぇ」
「そうですね。率直に言わせてもらうと、『できるわけがない』と思います。少なくとも僕はできる気がしない。誰がそう言ってるんですか?」
「いや、勢い的にできそうなこと言ってそうな人、沢山いるでしょう?」
「そうですかぁ……。正直、しんどいでしょうねぇ……。今のままだと」
「どうしてしんどいの?」
「いやぁ、こういう言い方がいいのかどうかはわからないですが、海外でクラウドにするっていう流れと、日本でクラウドっていう時の流れ、大きく違うんですよ」
「どういうこと?」
「メインフレームに始まり、オープン系、ウェブといった技術の流れで、会社の中にITって入ってきていると思うんですけど、多くの海外企業のITは、そのたびごとに適切に投資もきちんと行って、スクラップ&ビルドしてきているんですよね」
「ほぅ」
「そうなんです。例えば、グループウェア。今、多くの海外企業ではグループウェアって少数派になり、ほかの拡張性の高いコミュニケーションインフラに10年前から乗り換えてきている。でも、日本企業ってグループウェアに乗っているアセットを代え切れていなくて、新しいコラボレーション入れようとすると割と重石になってる」
「あぁ、この前業界団体の会合で話した時に、知り合いのA部長、同じこと言ってたなぁ」
「そうです。これはメインフレームとかも同じ。海外企業ではメインフレームやオープン系で各業務に最適なITを整備することから、きちんとSOA型に置き換わって、かなりモジュール的なプラグ&プレイができる状態になっています。すなわち、クラウドっていうソリューションが『ポイントソリューション』として入りこめる形なんですよ。まぁ、『クラウドレディネス』が高い状態です。でも、部長のところは、バリバリの蜜結合型になっているわけで、そこにクラウドを突破口にして、あるいは受け皿にしてっていうのは、ちょっと荷が重いです。要は、クラウドを使う準備ができていない。僕、思うんですけど、多くの日本企業は、クラウドなんて考えてる場合じゃないって思うんです。要は、クラウドの前段階をちゃんとすることの方が大切だと思ってます」
「そうなんだよね……。でも、話はわかるんだけど、じゃ、どうすればいいの?」
「これ、話始めると割と長いんですけど、いいですか?」
「そうだよねぇ……。次は社長室に入らなきゃいけないから、早めに終わらないといけないんだよねぇ」
「そうですね。じゃ、折角だから、何回かに分けて、また来させてもらいますけど、いいですか?」
「お願いできるかな?」
「はい。そりゃ、もちろん」
「じゃ、今日は触りだけ。一言で言えば、日本経済の失われた20年ってあるじゃないですか? 個人的には、その問題は、日本の人口や消費構造の転換や産業構造の転換、そのための経済司令塔のあり方を高度成長時代のまま残していて、グローバル化の新しい波に追いついていない状態が続いているような気がしているんですけど、ITも同じようなことが起きているような気がしてます」