ソニーの神戸司郎業務執行役員は、「2011年11月に発表した収益改善プランでは1750億円の赤字としていたが、そこから約270億円の改善となっており、すでにS-LCD合弁解消効果が出ている。テレビ事業の収益性は、想定以上に改善してきている」と語る。
2012年度の液晶テレビの事業方針について、加藤CFOは「数量を追わず、収益構造の改善に向けたオペレーションを重視する」と語った。
それを裏付けるように、2012年度のテレビの出荷台数は10.7%減の1750万台と、前年実績に比べて1割縮小。昨年度前半までは、2012年度に4000万台としていた計画からは大幅に縮小し、2011年11月に公表した2012年度2000万台からも縮小させる。だが、その一方で、先に触れたように営業損失は800億円前後の赤字とするものの、「液晶テレビの損失がS-LCDの合弁解消などによる固定費削減効果があり、前年度に比べ大幅に損失を圧縮する」とみている。
また、「新興国においては、数を追わないというわけではなく、成長市場では売上拡大を目指す」(加藤CFO)と意欲をみせる。
2012年度の連結業績見通しは、売上高が前年比14.0%増の7兆4000億円、営業利益は黒字転換して1800億円、税引前利益も黒字転換して1900億円、当期純利益は300億円の黒字とする。
エレクトロニクス分野においては2012年度で黒字化を見込む計画であり、これによって、2014年度には、デジタルカメラ、ゲーム、モバイルの3分野で営業利益の85%を稼ぐというエレクトロニクス事業の復活シナリオにつなげる考えだ。
ソニーの平井一夫社長は、「事業経営のスピード、長期戦略に基づく投資領域の選択と集中、イノベーティブな商品・サービスおよび技術開発力、テレビ事業の8期連続の赤字の黒字化——エレクトロニクス事業においては、この4つの課題を解決できなければ、ソニーの再生もその後の成長もない」とする。2012年度はそれに向けた重要な1年になる。