テレビ事業の不振にあえぐソニーとシャープ

大河原克行

2012-05-17 09:00

本特集「電機大手の2011年度決算を読む」では、電機大手の決算を解説することで、電機メーカーの課題と展望を示そうとしている。

第3回となる今回は、テレビ事業の不振にあえぐソニーとシャープを取り上げる。(ZDNet Japan編集部)


「テレビ事業の黒字化」に尽きるソニー

 ソニーが発表した2011年度連結業績は、売上高が前年比9.6%減の6兆4932億円、営業損失はマイナス672億円の赤字、税引前損失はマイナス831億円の赤字、当期純損失は4566億円の最終赤字となった。

ソニーの加藤優CFO(最高財務責任者)
ソニーの加藤優CFO(最高財務責任者)

 ソニーにとって過去最大の赤字となった今回の決算を、同社の加藤優CFO(最高財務責任者)は、「為替の悪影響や東日本大震災およびタイの洪水の影響、先進国における市場環境の悪化などにより、CPS(コンスーマープロダクツ&サービス)部門、PDS(プロフェッショナル・デバイス&ソリューション)部門において減収。さらに、サムスンとの合弁を解消したS-LCDでの641億円の損失など、持分法による投資損益の悪化が影響し、2011年度は大幅な損失を計上することになった」と総括する。

 CPSの売上高は前年度比18.5%減の3兆1368億円で、営業損失は前年の108億円の利益から、一転してマイナス2298億円の赤字。液晶テレビやゲームのほか、タイの洪水被害の影響を受けたデジタルカメラ、PCなどが減収の要因だ。

 また、放送局向けなどのプロフェッショナルソリューション、半導体、コンポーネントなどで構成されるPDS分野の売上高は、前年比12.6%減の1兆3138億円。営業損失は前年実績の277億円の黒字から赤字転落し、マイナス202億円の赤字となった。東日本大震災の影響や為替の影響を受けた電池およびストレージを含むコンポーネントカテゴリーの減収が大きく響いているという。

 全売上高の48%を占めるCPS、20%を占めるPDSが赤字となっているのに対して、売上高で13%を占める金融事業が1314億円の営業利益を確保。営業利益率も15.0%と高い水準を維持している。また、売上高の10%を占める映画事業、7%を占める音楽事業、1%に留まる携帯電話事業のソニーモバイルコミュニケーションズが、それぞれ300億円台の営業利益を創出。エレクトロニクス事業以外は収益を確保している構造が浮き彫りになる。(なお、ソニーモバイルコミュニケーションズの業績は、2月15日までの期間のソニーエリクソンの持分法による投資損益、2月16日以降のソニーモバイルの売上高および営業損益、ならびに支配権取得にともなう評価差益で構成)

 その点においても、ソニーにとっての最大の課題は、やはりエレクトロニクス事業の復活であり、なかでもテレビ事業の黒字化ということに尽きるだろう。

8期連続で赤字のテレビ事業、明るい兆しも

 2011年度の液晶テレビの売上高は、前年度比28%減の8400億円。S-LCDなどの構造改革費用を除いた実質ベースでの営業損失は、マイナス1480億円の赤字となっている。そして、出荷台数は前年比13%減の1960万台だ。

 液晶テレビは、日本での市場縮小に加えて、欧州および北米での市場環境の悪化による販売台数の減少、価格下落の影響があるという。

 これで8期連続でテレビ事業は赤字。そして、2012年度もテレビ事業では800億円前後の赤字が残り、黒字化への出口がまだ遠いという状況だ。

 だが、テレビ事業において、いくつかの明るい兆しが出ていることも示す。

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