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ITを体系的に理解する:ITの歴史は「伝票・台帳・帳票の進化」 - (page 3)

宮本認 (ガートナー ジャパン)

2012-09-04 12:00

「最初は、意図の話から行きましょう。今までは、伝票、台帳、帳票を手渡しで処理していたものから、『端末』『ネットワーク』『ホストコンピュータ』で、つないで処理するようになりました。ここまでだって、業務的には画期的です。一言で言えば、『能率』の向上でしたし、それ以上でも以下でもない」
「そうだよなぁ」
「はい。そこで、ひとつの変化が生じ始めます。それは、先ほど『SIS』って言う言葉を言いました。これは『Strategic Information System』の略語ですが、言うなれば、目的が『戦略的』になり始めたんです。正確には、『戦略的』に使えば『競合』に勝てるケースが出始めたってことでしょう。このころからですね、僕たちのような『ITコンサルタント』ってのが、巷に溢れ始めたのは……」
「なるほど、鉄砲の発明と一緒だね。それまでは狩りとかに使っていたんだが、戦争に使うようになったって違いかぁ」
「その通り。要は、使い方で競合に差が付くってことが、ものすごく意識されるようになったんです。だから『BPRをやるべきだ!』とか『顧客サービスの向上を!』とか、そういうことにITを繋げて語るようになったんですね。言いかえれば、ITを使って業務を競争優位の源泉となるように組み立てることができるじゃないかって、考える人たちが出始めたってことなんですよ」
「あぁ、このへんから、実はイメージしづらくなるんだよなぁ……。ITを使って競争優位の源泉って、どうも、ピンと来ないのよ。ちなみにさぁ、SISって雰囲気はわかるんだけど、実際なんだったの?」
「有名なのは、米国の航空会社の例ですね。航空会社は、各社がそれぞれ予約システムを持っていました。各社は旅行会社にそれぞれ端末を置いていたんですが、その中の一社が、各社の予約システムを繋ぐシステムを開発したんですね。言ってしまえば、端末の置場が少なくて済む程度のことかもしれないんですが、これを作った航空会社には深謀遠慮があったんです。要は、旅行会社から予約しようとして空き状況を確認すると、システムを開発した航空会社の空き便から順番に出るようにしたんですよ。そうすると、何が起きたかというと、上から順番に埋まっていったんですねぇ……システムを用意した会社だけ、勝っちゃったんです」
「……」
「副社長、どうかしました? 僕、何か失礼なこと、言いましたか?」
「あぁ、ごめんごめん。ちょっと、考えちゃって……」
「何をですか?」
「いやぁ、今の話って、確かに『差がつくよなぁ』って思うんだよ。でも、その差ってものすごく小さな違いだよね。だってそうだろう? リストで上から並べるだけだぞ? そんなことで差がついちゃうって、経営ってやっぱり恐ろしいなぁ……」
「そうですね、恐ろしいですねぇ。ヒット商品とかと一緒かもしれません。ちょっとした違いが、大ヒットと空振りの違いを生み、業績に大きく差をつける。ですから、ITのことを経営は知っておくべきだ、という一つの意味は、こういったちょっとの差が業績に大きく跳ね返るかもしれないという点なのかもしれませんね。『リストの上から並べれば、空席は自分の会社の飛行機から埋まり、業績を上げる』って、非常にそれっぽい理屈なんですけど、どこか『風が吹けば、桶屋が儲かる』的な話ですよね。完全論理の世界とは言えないかもしれないんです。ただ、完全論理の世界ではないから、経営者は勘を働かさなければならない。そこに、経営がITにかかわる時の重要なヒントが隠れているような気がします」
「でもねぇ、やっぱり腑に落ちないんだよ……」
「何がですか?」
「ITってそんな小さな差を埋めるためにあるの? さっきも言ったけど、もっといろいろやってるじゃない」
「そうですね、おっしゃる通りです。ここが、実は迷走を繰り返した90年代以降のITの歴史といってもいいのかもしれません。そしておそらく、今の社長の疑問自体に、今日も入れて応えていくのが、今回の僕の役割だと思っています。今日は、ITはあくまで道具で、ただ、非常に重要な道具にもなりうるけど、正しく使わないと混乱や敗北を招いてしまいかねない、厄介な側面を持っているという点だけ、覚えておいてもらえませんかね」
「うん、そうだね」
「副社長、この話は、このあたりにして、一旦、次に進んでいいですか? この議論は、次回以降、もっと深堀していきましょう」

技術の進化

「さて、次です。それは何かというと、技術が急激に進化し始めてきたってことです」
「それは今でもそうじゃないか」
「そうなんですが、それが臨界点を超えてきたって言った方が、いいかもしれません」
「うん?」
「副社長、オープン系という言葉、聞いたことないですか?」

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