グローバル企業としてモバイル業界に君臨したノキアは、アップルとグーグルに足下をすくわれる形で没落した。しかし、ノキアが振りまいた種子がスタートアップとして花を咲かせようともしている。
全般に厳しい経済状況が続く欧州で、フィンランドが比較的健闘しているという。
フランス2のニュース番組で先週そんな話が放映されていた。「失業率が7%台に収まっている、その経済の強さの秘密は何か」といった内容だ。
もちろん好況というわけでは決してない。他のEU諸国の影響などもあって今年は経済が縮小、来年には失業率がふたたび8%を越えそうだという財務省の見通しも最近公表されたようだが、それでも「労働人口の約4分の1が失業者」というスペインの例は言うに及ばず、失業率が二桁台のフランスと比べてもかなりマシ、ということらしい。
そんなフィンランド経済の強さ、あるいはしぶとさの理由について、フランス2は3つのポイントを挙げていた。「労働力の柔軟性」「イノベーション能力」「比較的高い教育水準」の3つである。
番組では刃物メーカーの例などを交えて3つのポイントを説明していたが、なかでももっとも興味深かったのは2番目の点の具体例として出てきた製品、園芸用のやや大振りなハサミの話だった。
一見ごく普通にみえるこのハサミ、既存の製品にくらべて40%程度も少ない力でモノが切れるのが特徴。値段は高めだが、欧州の他の国にも輸出されているという。製品自体はローテクかも知れないが、競争力のあるイノベーションを生み出せる背景には、研究開発(R&D)を重視するフィンランド企業の傾向があるとして、EUの他国に比べてR&Dへ割り当てる資金の比率が高い、という説明がついていた。
なお、労働力の柔軟性については「従業員の配置換え(=仕事内容の変更)を簡単にできる」とわざわざ述べていたから、これはそういう柔軟性(雇用・労使間契約や法律などによる制約)が低いと思われるフランスの場合を踏まえたものかもしれない。
フィンランドといえば、ムーミンにサンタクロース、Linuxのリーナス・トーバルズにノキアくらいしか思い浮かぶものがない私は、この話にまたちょっと驚いた。以前にもそうした復調の兆しがあることは見聞きしており、それを書いたりもしたのだが、「ノキアのような大企業が衰退した後、はたして(Angry Birds開発元の)ロビオのような新興企業だけで、どこまで新しい働き口をつくり出せるのか……という疑問を抱いていたからかも知れない。
そんなフィンランドの現状を取材した力作のレポートが、先ごろCNET News.comで公開されていた。