周知の通り、最近のグーグルはかつてない絶好調という状況が続いており、同社の株価は数週間前から過去最高の800ドル超えの水準で推移している。またAndroidについても、アップルがグズグズしている間に、Android陣営(実質的にはグーグルとサムスンの連合)がモメンタムの点でアップルを抜き去ってしまった感がある。
そんな状況で、ルービンはなぜ丸腰で戦う必要のある立ち場にあえて自分の身を置こうとしたのか。その部分がどうもしっくりこない。
Android事業を三段発射のロケットに喩えてみれば、ルービンは一番大変そうな第一ロケットで成層圏を抜けるところまで達して、「はい、ご苦労さん」と切り離される——思わずそんな絵も浮かんできてしまう。

Android事業から外れることになったアンディ・ルービン
主流から外されたマリッサ・メイヤー
こんなことを思わず考えさせられたきっかけは、この人事異動を伝えたWIREDのある記事だ。そのなかには「かつてのマリッサ・メイヤー(現ヤフーCEO)の時と同じように、ルービンも経営の中枢から外されたのではないか……そんな見方がグーグル社内でもひそかに飛び交っているようだ」という記述がある(註3)。
そういう視点に立って見直すと、2月にWall Street Journal(WSJ)で報じられたルービンの「サムスン潜在脅威説」も、あらためて「あれは何だったのか」という疑問が浮かんでくる。
はっきりしているのは、サムスンが3月14日に開催した「Galaxy S」新製品の発表イベントでの対応だ。新製品は既に発表されたが、事前にある程度想定できた問題がある。
サムスンが初めて米国で開催するGalaxy S発表会には、当然グーグルからもAndroid担当幹部、あるいは他の責任ある立ち場の関係者が登場するだろう。もし登場しなければ、かなり奇異に映るからだ。そして、ルービンが出ていけば、自ずとWSJの報道の真偽について聞かれることになる。
実際に「言ったか否か」という点より、公式の場でそうした質問が出てしまうこと自体が「困ったこと」になるかもしれない——。
と、このような問題が事前に想定できた。
無論、それだけのことで優秀な人材にお茶を引かせたりはしないだろう。しかし、結果的には、新たな責任者となったサンダー・ピチャイなり、ラリー・ペイジ本人が姿を見せれば、そうした問題は回避できることになる。