AppleのCEO、Tim Cookの立場をめぐる状況がここにきてに急変……そんな印象が伝わってくる3つのニュース―先週末から今朝にかけて報じられたものについて簡単に紹介する。
カール・アイカーンのApple株の大量取得
以前の話の中で少し触れていた有力投資家(activist investor=物言う投資家)のCarl Icahnが、その後もDellの非公開化計画をめぐって、Michael Dellや同氏を支援するSilver Lake Partnersと丁々発止を続けていることは一部のメディアなどで伝えられている通りだが、そのIcahnが今度は(というか、ついに)株価の低迷が続くAppleに照準を定めたことが米国時間8月13日に明らかになり、IT・経済関係の媒体でちょっとした騒ぎになっている(註1)。
この話の出所はIchan本人のツイート。下記の2つがいくつかの媒体で紹介されている(ツイートされた時間について、下掲の画像では「14日午前3時過ぎ」となっているが、後述のTech Trader Dailyによると発言のあったタイミングは米東部時間で13日の午後2時半前だったという)。
Tech Trader Daily(Barron'sのブログ)では、このニュースを受けて、Apple株価が5%も上昇したと伝えている。
[AAPL Ends Up 5%: Icahn Tweets ‘Large Position,’ Nice Chat with CEO Cook - Tech Trader Daily]
この話を取り上げたThe Wall Street Journal(WSJ)では、Icahnのポジション(買い集めたApple株)の量について「10億ドル以上」とする関係者の話を紹介している(Appleのこの日の時価総額は4447億5000万ドル程度)。またこの記事には、Icahn本人がtweetの内容に触れて「Apple株価が安く、借入金利も比較的低いいまの段階で、自社株買い戻しをもっとするべき」などとTim Cookに話をした、とするコメントも出ている。
Icahnの考えでは「今後まったく売り上げが増加しなくても(自社株購入などで)1株625ドルまでは株価が上昇しておかしくない」「3%で借り入れした原資を使って、1株525ドルで買い戻しすれば、株価は625ドルまでいく」という。
Icahnと言えば、前述のDellのほか、ちょうど2年前に発表された旧MotorolaのGoogleへの売却でも大きな影響力を発揮していた人物。大物投資家が(特定の企業の)株を買い集めるのも、また株価上昇に向けて経営陣に進言するのもごく当たり前のこと―やはり以前の話で触れていたDaniel Loebが、その後ソニーの株式を買い進め、同社経営陣に娯楽部門のスピンオフを進言したこと、そしてApple経営陣に対するDavid Einhornへの進言なども、すぐに思い浮かぶ例かもしれない。
ただし、望んだような結果(株価上昇)が得られなければ、こうした投資家が(投資先の)経営陣に圧力をかけてくることは言うまでもない。その点では、Tim Cookもこれまでのように「関心があるのはベストな製品をつくること」などといった抽象的な答弁を続けているわけにはいかなくなる、そろそろ具体的な結果を出さないと……ということかもしれない。