走行距離で保険料決定、製造や小売りなど9分野をカバー--日立のIoT戦略(後編) - (page 4)

大川淳 怒賀新也 (編集部)

2014-04-01 07:30

最大の成長分野は

 日立の社会インフラ事業で最も成長力が大きいのは何か。ヘルスケア、施設監視、O&Mなどは「これまで十分できていないので伸びしろが大きい」(香田氏)という。10年ほど前に語られていたユビキタスコンピューティングでは、破損の兆候を自動検知して管理者に警告する“インテリジェント道路”などが将来的に実現すると言われたが、ようやく技術がそのような理想論に追いついてきた。

 香田氏は「無線技術とビッグデータを処理するための高速なストレージ、データベースがそこそこの価格で入手できるようになった意味は大きい。技術的には、以前提唱されていた構想の実現が見えてきた。最大の問題は、技術があっても用途があまり考慮されていないことだ。今後の争点と言える。技術と事業モデルの合致がなければ価値はない」と述べた。

IT部門の使命にも変化

 IoTやM2Mの進展は、企業や組織のITを担当者にどんな影響があるか。「IT部門はこれまで、企業内のITの信頼性を高くし“止まらない”基盤をつくることが命題とされてきた。それは今後も不変」(香田氏)だ。しかし、今後大きく変わる点があるとする。

 香田氏は「従来の使命よりもっと重要なことは、ITの利用用途を把握することにある。IT部門の人々は、放っておけばビジネスの主導権を取られてしまうと思いがちだった。だが、アイデアを具現化するのはIT部門だ。IT側が生き残るためには製造技術、機械運用の構造、エンジンの保守などを学ぶ必要がある。さもなければ、エンジニアは生き残れない。広い分野の知識を持ち、利用者の視点でITを見る姿勢が絶対必要になってくる。情報だけですべて包摂するのは困難だ。われわれの社会イノベーション事業も実体としてはそのような発想が背景にある。無論、今後も中核はITだが、必要なスキルが大きく変わる」と話す。

 2013年、複数の大手調査会社がIoT時代の到来を控え、IT部門の今後について見解を示した。その中に「技術面での質問や課題にビジネスの解答を出す」「新たなスキルの獲得」があった。今回の香田氏の発言とほぼ一致している。IoTの潮流は、企業ITの現場にも多大な変革をもたらすことになるのだろうか。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  2. セキュリティ

    マンガでわかる脆弱性“診断”と脆弱性“管理”の違い--セキュリティ体制の強化に脆弱性管理ツールの活用

  3. セキュリティ

    クラウドセキュリティ管理導入による投資収益率(ROI)は264%--米フォレスター調査レポート

  4. クラウドコンピューティング

    生成 AI リスクにも対応、調査から考察する Web ブラウザを主体としたゼロトラストセキュリティ

  5. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]