最大の成長分野は
日立の社会インフラ事業で最も成長力が大きいのは何か。ヘルスケア、施設監視、O&Mなどは「これまで十分できていないので伸びしろが大きい」(香田氏)という。10年ほど前に語られていたユビキタスコンピューティングでは、破損の兆候を自動検知して管理者に警告する“インテリジェント道路”などが将来的に実現すると言われたが、ようやく技術がそのような理想論に追いついてきた。
香田氏は「無線技術とビッグデータを処理するための高速なストレージ、データベースがそこそこの価格で入手できるようになった意味は大きい。技術的には、以前提唱されていた構想の実現が見えてきた。最大の問題は、技術があっても用途があまり考慮されていないことだ。今後の争点と言える。技術と事業モデルの合致がなければ価値はない」と述べた。
IT部門の使命にも変化
IoTやM2Mの進展は、企業や組織のITを担当者にどんな影響があるか。「IT部門はこれまで、企業内のITの信頼性を高くし“止まらない”基盤をつくることが命題とされてきた。それは今後も不変」(香田氏)だ。しかし、今後大きく変わる点があるとする。
香田氏は「従来の使命よりもっと重要なことは、ITの利用用途を把握することにある。IT部門の人々は、放っておけばビジネスの主導権を取られてしまうと思いがちだった。だが、アイデアを具現化するのはIT部門だ。IT側が生き残るためには製造技術、機械運用の構造、エンジンの保守などを学ぶ必要がある。さもなければ、エンジニアは生き残れない。広い分野の知識を持ち、利用者の視点でITを見る姿勢が絶対必要になってくる。情報だけですべて包摂するのは困難だ。われわれの社会イノベーション事業も実体としてはそのような発想が背景にある。無論、今後も中核はITだが、必要なスキルが大きく変わる」と話す。
2013年、複数の大手調査会社がIoT時代の到来を控え、IT部門の今後について見解を示した。その中に「技術面での質問や課題にビジネスの解答を出す」「新たなスキルの獲得」があった。今回の香田氏の発言とほぼ一致している。IoTの潮流は、企業ITの現場にも多大な変革をもたらすことになるのだろうか。