環境情報の自動取得
NECのM2M展開では、事例がいくつか出始めている。農業の分野では、施設園芸を対象にした、M2Mサービスを既にビジネス化、5月末から全面的に稼働を開始している。NECは石川県小松市にある、トマト栽培農家5軒が保有する、12棟のビニールハウスに、農業ICTクラウドサービスを提供した。

農業ICTクラウドサービスでトマトを作る
CONNEXIVEを、施設園芸の監視に活用するものだ。トマトを栽培しているハウス内に設置したセンサが温度や湿度、炭酸ガス量、照度を定期的に自動収集し、NECのクラウドに送る。
これらのデータは自動的にグラフ化され、PCやスマートフォンに表示することが可能で、ハウス内の環境を遠隔地からでもリアルタイムに把握できる。これまで、人手に依存していた、ハウス内の環境情報収集が自動化され、作業効率が向上化しているという。
木村氏は「ようやく、情報が集まり出してきたのだが、現状は集まったデータの見える化などに取り組んでいる段階だ。次の局面では、これらが蓄積され農業試験場が持っているデータを組み合わせて、収量予測などをしようかということになる。この分野では、まず生産の支援というところに焦点を絞っている」と語る。
多様なデータとスマートシティ
自動車や工場など、さまざまなモノにセンサが設置されM2Mを介してつながり、これらが無線インフラに乗ってクラウドに一元的に接続されビッグデータを形成する。そのほかにも、オープンデータやSNSなど種々のデータが加わり、マッシュアップされてさらに新たな価値を提供することができる。それを幅広い領域で実現していく先に、NECはスマートシティを形成していくことを視野に入れている。
木村氏は「スマートシティという言葉はあるが、あらゆる領域のIT化にまでは至っていない。エネルギーや交通関連など、依然限られた部分での対応に留まっており、現状ではエネルギーについての取り組みが進行している」と語る。NECはスマートメーターを用い、電力利用の状況を計測しリアルタイムな利用量管理の実現を通じ、電力の不正利用などを検知できるサービスを提供する。
同社は先頃、北米の大手電力事業者を中心にグローバルで実績を持つ、米Space-Time Insightと提携、スマートエネルギー事業で協業する。NECは、Space-Time Insightのリアルタイム可視化ソフトについて、日本とアジア太平洋(APAC)地域でスモールグリッドやスマートメーターなどの需要に向け、独占販売する契約を同社と締結した。
このソフトを活かし、蓄電池の蓄電残量や利用履歴、太陽光や風力などの発電量や過去の発電履歴、個々のスマートメーターの動作状況や資産情報などを、地図上に一覧表示するシステムを電力事業者や自治体に販売する。市場に活力をもたらし、パートナーとの連携を強化することなどを目的とし、標準化団体など複数の事業者が協働する活動にも積極的に参画して行く考えだ。