ファイアウォールの外にあるモバイル端末
――MobileIronを選ぶメリットはどこにあるのか。
まず、非常にシンプルであることが挙げられます。MobileIronを利用する場合、エンドユーザーはデバイスを選んでMobileIronのアプリをインストールし、仕事用のIDとパスワードを入力すればセキュリティが確保され、メールの設定が可能になります。
次のステップでは、(企業内アプリストア)「Apps@Work」からさまざまなアプリケーションを入手します。これはApp Storeのようなスペースで、セキュアな形でエンタープライズで使うアプリのみを集めています。(MAMの役割を果たすセキュアコンテナの)AppConnect技術で仕事用と個人用にアプリを分けてセキュアに保護しています。
その次のステップは、(MCMの役割を果たすドキュメントビューワアプリ)「Docs@Work」からコンテンツやドキュメントを入手します。それは、SharePointのようなファイルサーバやBoxのようなクラウドストレージなどを経由する形になります。さらに、エンタープライズ向けのセキュアなブラウザである「Web@Work」も利用できます。Web@Workではシングルクリックでウェブアプリケーションにアクセスできます。
モビリティというのは、今までの企業内でのシステムとは全く違います。常にモバイル端末はファイアウォールの外にあるため、MobileIronでは、セキュアなトンネリングのトラフィックで安全に企業にアクセスすることを可能にしています。
モバイル端末をなくした場合、あるいは会社を辞めた場合には、MobileIronを使っていれば、IT部門の担当者はモバイル端末のエンタープライズ向けの作業スペースにあるアプリケーションや仕事用のデータのみを消去できます。この際に個人用の写真や家族、友人とのメールを消してしまうようなことはありません。
――IBMも競合になり得るが、IBMをどう見ているか。
IBMにとって、いい動きだと思います。そしてそれ以上に、MobileIronにとってもいい動きだと思います。IBMとAppleの提携は、1980年代後半のMicrosoftとの提携によく似ています。このパートナーシップで、ある種iOSがエンタープライズ向けのプラットフォームとしての地位を確立する効果があると思います。MobileIronは、iOSがエンタープライズでも主要なプラットフォームになっていくことは知っていました。
IBMは、今後パートナーシップを通じてエンタープライズアプリケーションをどんどん構築していくことになります。そうすると、モバイル端末やモバイルアプリが大企業でどんどん採用されていきます。これはEMMにとってもMobileIronにとっても、いいことだというわけです。
IBMは2013年Fiberlinkを買収していますが、もともとFiberlinkは中小企業向けのプラットフォームを提供している会社です。MobileIronのユーザー企業はエンタープライズクラスですので、当然さまざまな領域で優れた製品を活用しています。
そうするとMobileIronにとっても、いいことです。その例として、MobileIronはオンプレミスのEMMもあるし、クラウドのEMMも出しています。エンタープライズで成功を収めていくためには、その双方を提供できる企業でなければいけません。
規制が厳しい業種でもBYODを受け入れ
――米国の西海岸と東海岸ではBYODに対する意識も違うと聞く。米国でのモバイル活用の実際は。
MobileIronは、企業が最初からEMMを選択した場合でも、BYODで自然に入ってきたものに対応する場合でも、双方に適応できる製品です。企業はどちらのニーズも選択できます。基本的に、BYODを選択する企業、しない企業は地理的な要因ではなく、業界によって違ってくると思います。最新のユーザー企業の傾向では、ヘルスケアや製薬、金融サービスといった規制の厳しい分野でも段々BYODを受け入れるところが増えています。
重要なことは、EMMはBYODだけに関するものではないということです。従業員全員の生産性をより上げていくために、どうモビリティを活用していくかということに関わる部分になります。BYODは、中堅クラスのユーザー企業でコストセンシティブなところに重要だと思います。日本にクラウドベースのEMMを導入することになったのは、そういった側面もあります。
MDMのクラウド版は今までもあったので、MobileIronのクラウドサービスは新しいものではありません。重要なことは、本当の意味でのEMMのクラウド版はMobileIronが世界初になるということです。これからはActive DirectoryやSMSなど、企業のさまざまなリソースと連動する機能が増えてきますので、プラットフォームとして中立的なEMMが必要になります。
その管理負担は通常だと増えます。しかし、MobileIronは、今までのオンプレミス版の製品をモディファイしてクラウド版を作ったということではなく、最初からクラウドを念頭に設計して作ったものです。そのためエンドユーザー側だけでなく管理者でも非常に使いやすいことが特徴です。どんなにいい製品でも簡単に使えないとEMMは普及しませんので、そこにフォーカスして開発しています。