コグニティブ(認知)コンピューティングのプラットフォームである「Watson」に10億ドルを投資してきているIBMは今回、その投資の成果を手にしようとしている。同社は米国時間10月7日、Watson事業のニューヨーク市オフィスの開設とともに、新たなパートナーと顧客を発表した。
ニューヨーク市に設置されたWatson Groupの本部は現在、本格的に業務を開始しており、ダブリンやロンドン、メルボルン、サンパウロ、シンガポールの5都市を皮切りに世界各地に開設されるセンターとともに、Watson Client Experience Centerという新部門の本拠地となる。またこれら5都市の施設には、IBMのResearch and Designチームも居を構えることになる。
ニューヨーク市の施設は、Watson Groupの従業員600人が勤務する場所となり、(シリコンバレーと比べると)数は少ないものの、増えつつあるニューヨーク市の新興企業を魅了し、Watsonを利用してもらうことを目的にしている。
同施設は、Watsonの能力を実際に目の当たりにする場所となるだけでなく、ここにはIBMの顧客やパートナーが利用するコグニティブ関連のアプリやサービスを向上させるためのデザインラボとともに、起業家をその分野の専門家と結びつけるインキュベーター機能が置かれることになる。
開発者がコグニティブコンピューティングを自らのアプリで採用する取り組みをサポートするために、IBMは「IBM BlueMix」の一環として新たなビッグデータ処理サービス一式も開始している。BlueMixは同社のクラウドや、クラウドプラットフォーム「SoftLayer」上で動作するサービスだ。BlueMixでは、ユーザーモデリングや機械翻訳、言語識別、概念拡張、メッセージ共鳴、関係抽出、質問応答、データのビジュアル化といった、Watsonの力を使ったアプリを開発するためのサービスが提供される。
Watsonの利用を表明した「エコシステムパートナー」には、Travelocityの創業者Terry Jones氏が開発を率いる旅行アプリ「WayBlazer」や、営業向けのカスタマーインテリジェンスアプリのメーカーとしてロンドンに拠点を置くRed Antが含まれている。また、セキュリティ分野や非営利団体、ヘルスケア産業、獣医学分野などの開発者も利用を表明している。
また、Watsonの顧客のなかには、スペインのCaixaBankのように、IBMによる新たなスキルの獲得を支援するところも含まれている。CaixaBankはIBMと協力してWatsonを教育し、スペイン語を理解できるようにする予定だ。
IBMは1月、10億ドルを投資し、コグニティブコンピューティングの商用利用に向けたWatson Groupを設立すると発表していた。この投資には、Watsonの力を利用するアプリを開発する新興企業に対する1億ドルの投資も含まれている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。