誰でも使えるBIツール
今回のDreamforceで発表されたAnalytics CloudとWaveは、こうした認識から開発されたと表すことができる。ただ、SalesforceがSaaS型のBIツールを開発するのは業界の流れとも指摘できる。iPhoneに代表されるスマートフォンの普及は、企業ITの分野に“コンシューマライゼーション”の潮流が生まれ、ビッグデータというキーワードとともに企業内外でコンピュータやセンサから生成されるデータはすべて分析できるものであるという前提があるからだ。
今回発表されるAnalytics CloudはSaaSであり、その基盤となるのがPaaSのWaveだ。逆に言えば、Waveを基盤としてAnalytics Cloudを開発したのである。Analytics Cloudの特徴としてBenioff氏は「誰でも使えるものだ。(ビジネスアナリストなどの)統計の専門家だけが使うものではない」と説明した。もちろん、iOSやAndroid、Windowsなどの主要な端末に対応している。
Analytics Cloudは、現在注目されつつあるBIツールと同様にさまざまなデータリソースを瞬時にグラフやチャートなどのビジュアル化する。グラフやチャートなどはダッシュボードで表示でき、ポータル画面に置けば、業務に必要となるデータを直感的に判断できるようになっている。IT部門に頼むことなく「誰でもダッシュボードを作れる」(Benioff氏)
これらのビジュアル化された「データは双方向で理解することもできる」(製品担当プレジデントのAlex Dayon氏)。つまり、例えば地域ごとや製品ごと、顧客の年令層ごとなどより詳細に知るために、グラフをクリックしてドリルダウンすることで、その現象の理由を理解することもでき、現業部門がIT部門の手助けなくセルフサービス的に使えるデータディスカバリツールとしても活用できる(こうした機能は現在、TableauやQlikViewなど注目されるBIツールでは当たり前となっている)。

イベント2日目の基調講演では、デモで作ったモバイルアプリからコーラを注文、そのコーラを“ドローン”で届けるといったことも
Analytics Cloudの基盤となるPaaSのWaveは、スキーマを作ることなく利用できるという。分析するための事前に加工することなくデータを分析できるとしている。
Analytics CloudとWaveは試験的に一部のユーザー企業で利用されている。その中の1社である金融大手のGE Capitalは、販売業務向けSaaS「Sales Cloud」やほかのデータを取り込んでマッシュアップして、社内マイクロブログ「Salesforce Chatter」を活用して、業務プロセスに統合していると説明した。
WaveはSAPやOracleなどの構造化データを取り込むこともできる(Analytics Cloudでも同様)。PaaSであるWaveは、Salesforce以外の第三者のソフトウェアベンダーなどがBIツールを構築することができるようになっている。
30社以上がWave上のエコシステムにすでに参加していることが発表されている。例えばInformaticaはデータインテグレーターとして、同社のETLツールを活用することでSAPやOracleのソフトウェアに蓄積されたデータをWaveに取り込めるようにしたと発表している。
システムインテグレーターとしてはAccentureやDeloitte DigitalなどがWave上にシステムを構築することを表明。独立系ソフトウェアベンダー(ISV)としてAxedaやDun & Bradstreet、FinancialForceなどがWaveのエコシステムに参加することを明らかにしており、Wave上で稼働するBIツールが提供されることになっている。
Analytics Cloudは英語版が10月20日から一般的に利用できる。そのほかの言語は順次利用が予定されている。Wave上で稼働するモバイルアプリはiOS端末で利用できるようになり、その後ほかのモバイルOSでの対応が予定されている。
PaaSのWaveは月額料金で利用できる。月額料金は「Wave Explorer」と「Wave Builder」の人数に課金される。
Wave Explorerは、データを分析したり見たりするとともにダッシュボードを作ったり共有したりできる、いわばエンドユーザー向けライセンスであり、1人あたり月額125ドル。Wave Builderは、Waveに導入するデータセットを作成、展開するとともにアクセスするエンドユーザー(つまりWave Explorer)を管理する管理者向けライセンスであり、1人あたり月額250ドルとなっている。