これに対し、杉原氏は「個別の業種や製品、サービスごとのクラウドを用意したのは、それぞれの分野においてユーザーが迅速かつ簡便に利用できるようにするためだ。個別とはいえ、同じクラウド基盤上に構築されるので、サイロ型システムが乱立するとは考えていない。そうした仕組みもさることながら、オラクルがクラウド戦略として最も重視しているのは、ユーザーにクラウドサービスの選択肢をできるだけ多く提供することだ。そのために、オラクルは今後もさまざまなクラウド形態を提案していくつもりだ」と答えた。
冒頭の発言は、このコメントのエッセンスである。オラクルならではの戦略展開ともいえるが、果たして先行する競合他社を追撃することができるか、注目しておきたい。
「業務ソフト市場はまだまだ発展途上である」 (弥生 岡本浩一郎 代表取締役社長)
弥生の岡本浩一郎 代表取締役社長
弥生が先ごろ、ネット上で記帳から確定申告書の作成まで完了できるクラウド会計ソフト「やよいの青色申告 オンライン」のサービスを開始した。また、デスクトップアプリケーションの新版「弥生15シリーズ」も発表した。岡本氏の冒頭の発言は、その発表会見で、業務ソフト市場の現状について語ったものである。
やよいの青色申告 オンラインは、この1月にサービスを開始した「やよいの白色申告 オンライン」を土台として新たに開発。弥生15シリーズはクラウドとの連携などを強化したという。会見で説明があったそれぞれの詳しい内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは業務ソフト市場の現状に注目してみたい。
会計や給与、販売などからなる弥生シリーズは、これまで27年間にわたる販売実績として登録ユーザー数が125万社を超える中小規模事業者向けのベストセラー業務ソフトである。だが、岡本氏によると、特に小規模事業者の業務ソフト利用率は3割程度と未だ低く、冒頭の発言のようにまだ発展途上にあるという。
そこで、そうした小規模事業者の業務ソフト利用率を上げるために、岡本氏が注目しているのがクラウドの活用である。クラウドベースのシステムならば、導入や運用に手間がかからず、必要なときにすぐに使うことができ、初期投資も抑えられるからだ。今回の新サービスである青色申告 オンラインは、その重要なアプローチとなる戦略展開だ。
岡本氏はこの青色申告 オンラインの登録ユーザー数を、2015年半ばまでに20万社規模にしたいという。そうなれば、同社の業務ソフト全体のクラウド利用率が、現状の1%程度から10%超に引き上がるという。
さらに同社では、今後の弥生シリーズにおいて、クラウドアプリケーション「弥生オンライン」の新規開発や、デスクトップアプリケーションとクラウドサービスの連携による付加価値の向上を図ることで、一層の市場開拓を進めていく構えだ。
岡本氏が言うように、クラウドは本来、中小規模事業者にこそメリットがあるITの仕組みである。この市場に大きな影響力を持つ弥生の新たなアプローチによって、今後、着実にクラウド利用率は高まっていきそうだ。