ただ、遠藤氏のクラウドに関する説明を聞いていて気になったのは、業務アプリケーションのクラウドサービスであるSaaSへの言及がなかったことだ。SaaSはクラウドサービスの種類でいうとプラットフォームではないが、同氏が言うプラットフォームの最大化がOne to Manyのビジネスモデルを意図しているのならば、SaaSも対象になるのではないか。その点を会見の質疑応答で遠藤氏に聞いたところ、次のような答えが返ってきた。
「SaaSはクラウド基盤上でこれからさまざまなサービスを展開していく中で、横展開できるものとしてのニーズが見えてくると考えている。そのタイミングを図りながら取り組んでいきたい」
どうやらNECとしては、基盤サービスとともに当初からSaaS型サービスをいくつも用意するという事業展開を図るつもりはないようだ。これも競合他社とは異なる同社ならではの戦略といえそうだ。
「2014年度のクラウド事業の売上高は、目標の2500億円に近いところまで追い込めそうだ」(富士通 塚野英博 執行役員常務)

富士通 執行役員常務 塚野英博氏
富士通が先ごろ、2014年度上期(2014年4~9月)の連結業績を発表した。同社の最高財務責任者(CFO)を務める塚野氏の冒頭の発言は、その発表会見で、クラウド事業の業績推移について語ったものである。
連結業績の概要は、売上高が前年同期比1.9%増の2兆1928億円、営業利益が同6.2%増の322億円、当期利益が同64.5%増の241億円と増収増益だった。この結果について塚野氏は、「7月に公表した計画に対し、売上高で428億円、営業利益で72億円上回った。為替が円安に振れたことやユビキタスソリューションを中心とした実ビジネスが改善したことが影響している。全体としては計画通りに推移している」と説明した。
その中でもBtoBのICT事業であるテクノロジーソリューション分野の業績を見ると、売上高は前年同期比2.0%増の1兆4921億円と増収だったが、営業利益は同32.3%減の507億円と減益だった。ただ、塚野氏によると、システムインテグレーション(SI)事業において既に受注残が相当程度積み上がっており、下期にそれを確実に消化していけば、上期の減益分はカバーできるとしている。
会見の質疑応答でクラウド事業の業績推移について聞いたところ、塚野氏は次のように答えた。「クラウド事業の売上高については、上期で1000億円が見えてきたところ。2014年度通年で2500億円の目標を掲げているが、それに近いところまで追い込めるのではないかと見ている」
同氏の冒頭の発言は、このコメントのエッセンスである。さらに、クラウドの中でもパブリッククラウドサービスの業績推移について聞いたところ、「上期で見ると、プライベートクラウドとほぼ半々。パブリッククラウドには今後も注力する計画で、大がかりな投資を行う予定だ」との回答があった。
推計すると、同社のパブリッククラウド事業は2014年度で1000億円規模になるかどうかといったところだ。さてこの事業規模をもって、同事業分野で先行するAmazon Web Services(AWS)やGoogle、Microsoft、Salesforce.comといった米国勢とグローバルで戦っていくことができるか。今後、大がかりな投資も予定しているということなので、大いに注目しておきたい。