デジタルバリューシフト

ワークスタイル変革に適した組織になる--競争より共創 - (page 4)

林大介

2014-12-26 07:00

プロセス6:アクションを起こす

 リソースを集め、コミットメントを宣言し、権限も与えられたらいよいよ実行の時だ。ワークスタイル変革のアクションの進め方については稿を改めて詳細を論ずるが、アクションはできるだけ変化を感じやすいところから手がけることが望ましい。なぜならば、組織としてそれなりの人材と予算、権限を与えられている場合、それに比例した期待を同時に背負うことになるからだ。

 最初のアクションで従業員をがっかりさせてしまうと求心力を失い、ワークスタイル変革を進めにくくなってしまうこともある。最初のアクションは即時に実行でき、なおかつ従業員の心理的負担を軽減する効果が高いものから手がけることを推奨する。

プロセス7:プロセス3~6を繰り返す

 理想の組織に近づけるために、プロセス3~6を繰り返していく。アクションを起こした結果リソースが足りなければ追加し、そのリソースによって組織の名称やコミッションが変化するのであればそれを実行し、新たな権限を持って次のアクションへとつなげていく。このプロセスは年単位ではなく、サイクルは短い方が望ましい。数々のアクションを経て、組織は理想型へと近づいていくだろう。

ベンダーを競わせてはいけない

 もう1つ、体制面で重要になるのは社外の体制である。デジタルテクノロジの導入にはITベンダーが関わるだろうし、什器の導入にはオフィスファシリティベンダーが関わるだろう。人事制度改革にはコンサルティング会社が関わるかもしれない。

 しかし、ここで最大に注意して頂きたいのは、ベンダーなどの社外パートナー同士を競わせてはいけないという点である。情報提供依頼(RFI)や提案依頼書(RFP)といったプロセスは思い切って省略していただきたい。それはなぜだろうか。

 それはワークスタイル変革というテーマが持つ多面性に起因する。何度も論じているように、ワークスタイル変革に関わる要素はデジタルテクノロジから人事制度に至るまで幅広い。コンサルティングの要素も含めると、1社で全ての要素を100%引き受けられる企業は存在しないはずだ。

 しかし、RFIやRFPというプロセスを踏むと、提案する側はできるだけ1社で可能であることを証明する必要があるし、アライアンスを組むにしても他の競合との重複を避けなければならず、提案は複雑化する。

 その複雑化した提案を評価して選定するのは困難で、かなりの時間を要する。最終的には、従業員の心理的負担軽減などそっちのけで、結局コストくらいしか選定の基準が残らなくなってしまう。粗末な結果になることは想像に難くないだろう。

 つまり、さんざん時間を掛けてようやく可もなく不可もないシステムや仕組みが導入され、ベンダーの弱点が露呈した部分の従業員の負担は変わらない、という可能性があるのだ。これはベンダー同士を競争させた結果起きるリスクである。筆者はベンダー同士を競争させるのでなく、複数のベンダーと「共創」すべきであると考えている(図3)。

 それぞれのベンダーが最も得意とする製品やサービスの組み合わせを、一丸となって創意工夫し、最適解を作り上げるのだ。このためには例え競合であっても上手に協力関係を築くことができるベンダーを探し当てるか、もしくはそのようにベンダーをアレンジしていかなければならない。


図3:競争と共創の違い

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