三国大洋のスクラップブック

アマゾンKiva、ドローン、RoboCup--ロボットは人間社会の夢を見るか

三国大洋

2014-12-06 08:00

 米Amazonが、1年で最も忙しい書き入れ時であるサイバーマンデーを翌日に控えた米国時間11月30日に、カリフォルニア州に新設した配送センターの内部の様子を報道関係者に公開していた。

 昨年のこの時期には例の無人機(Prime Air)を発表して世間をあっと言わせていたAmazonだが、今年の目玉はセンター内を走り回る荷物運搬用ロボット。無人機と比べると文字通り「地に足の着いたもの」という感じもするが、「台車型のロボットが商品を満載した棚ごと動き回る」というのは予想外で、これには結構驚いた。記事にある動画レポートには、そうしたKivaロボットの動き回る姿がしっかり出ていてわかりやすい。

[A Day in the Life of a Kiva Robot]
(2011月5月にYouTubeに公開されていた動画。今回披露されたAmazonの配送センターでもほぼ同様の仕組みが実現されているようだ)

 AmazonによるKivaロボットの現場配備については、WSJが事前に11月19日付の記事で関係者の話を報じていた。この記事には「AmazonがKivaロボットの導入で年間4億~9億ドル程度の経費節減を見込んでいる」「アマゾンの商品発送に費やす経費は、2009年あたりから大きく膨らみ続けており、今年9月末まで9カ月間では売上全体の12.3%を占めるまでに上昇(2009年には8.4%に過ぎなかった)」「今年第3四半期にかかった発送コストは26億ドルで前年比30%増加」といった記述が並んでいる。

 AmazonがKivaの買収で支払った金額は7億7500万ドルと伝えられているので、その分だけなら簡単に元がとれてしまいそうにも思える一方、買収後にどの程度の追加投資があったか、ロボット製造などにどれくらいのコストがかかるかといった数字はまだ目にしたことがないので、実際のところ、どんな皮算用がなされているかが気になるところでもある。

 このWSJ記事でもうひとつ目に付くのは、Amazonが米国の配送センターで年末商戦期に雇う一時従業員の数を昨年の7万人から今年は8万人に増やす予定で、その前提には前年比で最大18%売上が増加する、という予測があるという点。ただし、「今年のブラックフライデーやサイバーマンデーは、小売業者側が期待したほど売り上げが伸びていない」といったニュースもすでに出ていることから、Amazonの目論見通りに推移しているかどうかはわからない。

 この点に関連して、12月1日付のRe/code記事には、「年末商戦期に何らかの形で配送費無料を打ち出すことが(大手の小売業者などの間で)ほぼ定着するなか、AmazonとWalmart以外では大半の顧客の(注文にかかるの)配送コストが上昇」「薄利しか残らないリアルな店舗での特売セールから、儲けの出ないオンラインセールに、買い物客が移行している」などとする専門家のコメント(Razorfishのコマース戦略担当幹部)が紹介されている。これは、全般的にみれば、配送コストに関する競争力が小売業者の勝ち組と負け組とを分ける要因としてますます比重を増している、ということかもしれない。

 Amazonの配送センターについては以前に「商品のピッカーが極めて長い距離を歩かされる」といった厳しい労働条件に関する話が注目を集めていたこともあった。Kivaのロボット導入が少なくともそうした問題の解決もしくは軽減につながることは比較的想像しやすい。そうした部分をどう数字に落とし込むかというのはよくわからないが、配送に関わるボトルネックも減り、企業の競争力も向上するというのであれば、導入側にとってはそれこそ一挙両得に違いない。

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