Kivaはロボットサッカー界の出世頭?
ところで、実はこのKivaロボットの原型が、ロボットによるサッカーの世界大会である「RoboCup」に出場していたロボットだったという話をつい最近になって知った(CNETの動画レポートを目にした晩のことだったので、余計にびっくりした)。話の主は、RoboCupの発起人の1人である北野宏明(ソニーコンピュータサイエンス研究所所長)だから間違いはない。
またKivaの共同創業者で同ロボットの生みの親であるRaffaello D'Andreaという人物の自己紹介ページにも、「コーネル大学のCornell Robot Soccer Teamを率いて、RoboCup世界大会で4年連続優勝」などと書かれてある。D'Andreaは現在、チューリッヒ工科大学(Eidgenössische Technische Hochschule Zürich:ETHZ)教授の立場で「Dynamic Systems and Control」という分野を研究しているそうだ。
(2012年1月に公開されていたD'Andreaのインタビュー。1分半あたりからKivaの話が、3分過ぎからRoboCupに関する話がそれぞれ出てくる)
RoboCupについては、縁あって1998年の東京大会を観に行った覚えがある。まだきちんと動作しない「選手」も多く、その面白さは「わかる人にしかわからない」ものといった印象がかすかに残っている。そのため、あの時のサッカーロボットの姿と、いま動画で見るKivaロボットの姿とを結びつけて考えるのはなかなか難しい…。
「生まれて間もない頃に一度会ったきりだった親戚の子供が、いつの間にか成人して立派に働いている、その姿を目にした時と似た感じ」と言ったらいいかもしれない。十数年も経てば人も立派に成長するし、ロボットも一人前の働きができるようになる(そうなるよう研究開発を続けてきた人たちがいた)と改めて感心してしまった。
北野によると「RoboCup出身のロボット」が実戦(実社会)で活躍した例としては、Kivaのほか、米同時多発テロの際にワールドトレードセンター跡地で作業にあたった例や東日本大震災後に福島原発へ派遣されたものなどもあるという。
D'Andreaについてウェブを調べていたら、下掲の動画が見つかった。TEDのあるイベントで撮影されたドローンのデモである(動画の公開日は2013年6月となっている)。「放り投げても落っこちてこない(空中にそのまま留まる)」とか「水の入ったグラスを乗せたまま浮上できる」とかいったことがすでに実現されているのがわかる。
[Raffaello D'Andrea: The astounding athletic power of quadcopters]
実は前回の記事を書いていた際には、ドローンのことを「高性能のリモコンヘリコプター」程度にしか認識していなかったが、この動画に出てくるドローンはそうしたものとはまったく別のもの――たまたまヘリコプターの形をしたロボットである。こうしたものが少なくとも研究の場ではすでに実現されているという事実に驚くとともに、己の不見識=不勉強を恥じ入るばかりである。
RoboCupとKivaのロボットの実例を踏まえると、デモのなかに出てくるようなドローンをわりと普通に見かける、といった状況がほんの十年くらい先には到来している、といった可能性も思い浮かぶ。