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デジタルバリューシフト

ワークスタイル変革の本当の進め方 - (page 2)

林大介

2015-01-20 07:00

成功率が3分の1程度と感じる理由

 確たる統計が存在する訳ではないが、ワークスタイル変革を手がけてきた事例や有識者の弁など、筆者の身のまわりの情報を整理すると企業のワークスタイル変革の成功率は3分の1程度ではないかと推察している。この数字の正誤はさておき、それほど高い数字にはならないというのは誰しも肌で感じていることではないだろうか。そして、これ程までに高い「失敗率」の原因はどこに存在するのだろうか。

 それはこれまでの連載で主張してきたことを「逆」にするとわかりやすい。

  • ワークスタイル変革の目的は売り上げ向上とコスト削減
  • 具体的な手段は従業員の物理的な負担(移動距離や仕事時間など)を削減すること
  • 総務とIT、人事がそれぞれ動き、複数のベンダーでコンペして実行者を決める

 この3点を読んで、「上手くいきそうだ」という直感は得にくいのではないだろうか。しかしながら、ワークスタイル変革の実態はこれに類似するケースがほとんどである。実はこの3点は「普通の」プロジェクトであれば、それほど違和感はない(図1)。会社の利益が最終目的であり、効果を測定しやすい指標があり、実行にふさわしいベンダーを選定すること自体は至って普通の進め方である。

 実は、普通ではないのは「ワークスタイル変革」というテーマの方なのだ。これに気がつかずに「普通に」ワークスタイル変革プロジェクト進めると、たくさんの罠が待ち受けている。


図1:通常のプロジェクトとワークスタイル変革プロジェクトの違い

ワークスタイル変革プロジェクトに潜む3つの罠

 では具体的に陥りやすい3つの罠について解説していこう。どれも「普通の」プロジェクトにおいては問題にならないことだが、ワークスタイル変革プロジェクトの特殊性を考慮すると看過できない内容だ。

(1)ビジョン策定の罠

 どのプロジェクトにおいても、自社がどうなりたいかというビジョンの策定を行う。しかし、ワークスタイル変革においてはビジョンの策定に時間を掛けるべきではない。なぜならば、ほんの数年単位でワークスタイルのトレンドは変化し続けるからである。2年も経てばスマートデバイスの大半は「過去のもの」になり、新たに登場するクラウドサービスも数多いだろう。

 最初に3カ月も半年もかけてビジョンを固めてしまうと、逆にそれに束縛されて新しいものを受け入れられなくなる可能性があるのだ。ビジョンはシンプルに、すぐ決めてこだわらないことが肝要である。関連する組織が多いほどビジョン策定に時間がかかる傾向にあるので要注意である。

(2)KPIの罠

 プロジェクトの成否の評価、もしくは効果を測定するためにKPIを設定するが、これにも罠が潜んでいる。プロジェクトにはKPIがつきものだが、KPI達成自体が目的化しやすいというデメリットがあり、特にワークスタイル変革プロジェクトにおいては注意したい点だ。

 例えば、残業時間削減のKPIを設定したとしよう。プロジェクト関係者や従業員は、これがKPIであるが故に全力を尽くして達成しようとしてしまう。その結果、おそらくKPIの目標値をクリアするだろう。ただし、その際に犠牲になるのは結局従業員であるケースが多い。自宅に持ち帰って隠れて残業(もちろん対価は支払われない)したり、そもそも残業代を給与の一部と捉えている人にとっては単なる収入減と捉えられてしまうだろう。

 KPIのもう一つの罠がここにある。KPIはどうしても売り上げやコスト削減などの経営指標に紐付いてしまうことが多く、最終的に従業員の心理的負担削減など考慮されないケースが多いのだ。KPIは極力少ない項目で、かつ従業員価値を高めることに紐付いているものを選択しよう。

(3)仮想組織の罠

 最後はいわゆるバーチャル組織の罠である。ワークスタイル変革プロジェクトは、どうしても本業を持ったまま兼任の状態でメンバーがアサインされることが多い。ワークスタイル変革は兼任で務まるほど簡単な仕事ではない。各メンバーの意見や判断は公平性を失い、進捗も遅れ気味になることは避けられないだろう。しかし、プロジェクトは進めなければいけないので、結果的に社外の誰かに丸投げになってしまう。

 自社のワークスタイル変革の要は自社の従業員こそが一番よく把握しており、丸投げされた外部の人間の成果など推して知るべしである。全メンバーを専任することは現実的には困難かもしれないが、少なくとも中心的役割を担うメンバーについては絶対に兼任させてはならない。

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