業界を越えて連携する企業が成功する--アクセンチュア報告書に見るITの可能性

三浦優子 2015年04月10日 07時30分

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 アクセンチュアは4月8日、この1年で企業が押さえるべき5つのITトレンドを定義した調査レポート「Technology Vision 2015」に関する説明会を開催した。今回のテーマは「デジタルビジネスの時代:業界の垣根を越えて」となっている。

 同レポートを監修した、AccentureグローバルテクノロジR&D担当マネジングディレクターのPrith Banerjee氏は、「2013年時点ではすべてのビジネスがデジタル化されるとお話しした。実際に産業機器メーカーだったGeneral Electric(GE)がすべてをデジタル化し、ソフトウェアの会社に変貌している。2014年時点では『デジタル時代の創造的破壊者へ』として、それまでベンチャー企業に頼ってきたイノベーションを伝統的な大企業自身が行っていく時代となるだろうとお話しした。こうした変化を受け、2015年は一歩進んで、今回のテーマを掲げた」と説明した。

Prith Banerjee氏
Accenture グローバルテクノロジR&D担当マネジングディレクター Prith Banerjee氏

 これまで、企業内だけの閉じた世界を“Me”の世界として、今後は他社と連携してビジネスを進める“We”の世界に転換するべきと指摘している。「MeエコノミーからWeエコノミーへと変化し、業界の垣根を越えた連携を実現した企業が成功を収める時代となる」(Banerjee氏)

 この変化に向かう5つのトレンドとして(1)“個”客体験をもたらすインターネット、(2)成果を売る経済、(3)プラットフォームの改革と進化、(4)インテリジェントな企業、(5)“ワークフォース”再考――という5つの要素を挙げ、「この5つのトレンドに共通したテーマとなるのがIoT(Internet of Things:モノのインターネット)。これまで人をつなげてきたインターネットがデバイスとつながる時代となることで大きな変化が生まれる」とBanerjee氏は意義を解説した。

5大トレンド
5大トレンド

「ハードではなく体験を提供」の意義

 5つのトレンドの詳細について、アクセンチュア デジタル コンサルティング本部 マネジングディレクターの立花良範氏が説明した。

 (1)の「個」客体験をもたらすインターネットは、「マスパーソナリゼーション」を指す。IoTでさまざまなデバイスがネットにつながっていることから企業は顧客とのタッチポイントが増え、個々の顧客の動向を把握しやすくなる。そのデータから得られる、個客の嗜好にあわせて提案し、マインドシェアを高め、それをバリューとして活用できるか否かが企業競争の領域となると分析している。

 事例としてアクセンチュア自身も参加する訪日外国人向け無料Wi-Fi「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」での位置情報に基づくサービスリコメンデーション、米Macy'sが実施する個客情報に基づいた来店時プロモーションなどがある。

立花良範氏
アクセンチュア デジタルコンサルティング本部マネジングディレクター 立花良範氏

 ただし、「顧客の動向を把握し、適切に提案するためには個人データの活用が必要になるものの、調査結果によると単一企業内でのデータ共有は認める消費者が67%なのに対し、サードパーティを含めたデータ共有は27%しか認めていない。他者連携によるWeエコノミー成功には、複数企業が連なって顧客と信頼関係をつなげるかが鍵となる」(立花氏)と新たな課題も登場すると指摘した。

 こうした考察を踏まえ、立花氏は「今こそデジタルマーケティングに本気で取り組むとき」と提言した。海外に比べ遅れているといわれるデジタルマーケティングに本気で取り組み、エンドトゥエンドでのカスタマーエクスペリエンスを再設計するべき時期に来ているとしている。

 (2)の成果を売る経済とは、1968年にハーバード大学教授だったTheodore Levitt氏の発言「個客が欲しいのは1/4ピッチのドリルではなく、1/4ピッチの穴である」が示すように、実は個客が欲するのはメーカーが販売するハードウェアではなく、そのハードウェアを利用することで得る結果であるという指摘だ。

 「もっとも自動車のように、利用者ごとに利用目的が異なるものに対しては、企業側には正確な顧客の目的は理解できないでいた。しかし、デジタル時代になってタッチポイントが増えたことで、そこからわかる振る舞いを通じ、顧客が欲しているものを正確に理解しやすくなってきた。色々な側面から顧客を理解することで、収益機会が増大する。デバイスメーカーだけに限った話ではなく、さまざまな企業にとって影響がある」(立花氏)

 事例としては、Michelinがタイヤにセンサを埋め込み、実装距離ベースで課金しているケースを紹介。バルセロナのTeatreneu劇場では、顔認証システムを使って顧客の笑顔を測定し、笑顔が多かった観客に多く課金し、笑わなかった観客からは料金を徴収しないシステムを導入したところ、売り上げが25%増えたという。

 こうした成果を踏まえ、「企業は自社にとって成果とは何か、本質的に問い直すべき時期になっているのではないか。トヨタ自動車の豊田章男代表取締役社長の“われわれは自動車というハードウェアではなく、自動車に乗って得られる体験を提供している”という言葉からわかるように、顧客が求めているものは何かを、顧客接点が増えている今、考え直すべきではないか。商品、サービスのデジタル化とともに、顧客接点、フォローすべき顧客体験価値を再考し、顧客中心のビジネスへとシフトすべきだ」と提言している。

 (3)のプラットフォームの改革と進化は、プラットフォームの位置付けを従来ITメーカーが提供してきた1社で構築したものとするのではなく、企業や業界の枠を越えたエコシステムをもったものだとしている。

 プラットフォーム改革を実践している事例として、農機具を提供する独CLAASが提供する「365FarmNet」を挙げる。農機具の提供の目的を、農家の成果アップと捉え直したことで、農機具のデジタル化にとどまらず、他社と共同で農家に必要な情報、自然災害が起こった際のリスク管理としての保険提供など、農家のためのトータルサポートを行うビジネスへと変革した。こうした結果から、成果をもたらすエコシステム、その中での自社の役割を定義するべきだと提言している。

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