製造業におけるIoT/IoE戦略の基本
製造業におけるIoT/IoE戦略立案の基本プロセス(図3)は、自らが持つ「コンテンツ」が何であるかを自覚することからスタートする。次に、そのコンテンツは誰のためになるかを考察する。ここで前回で提言したデータ活用の”センス”の獲得方法を思い出してほしいのだが、大切なのは本質的な問いである。
そのコンテンツがあることで最も恩恵を受けるのは誰で、どんな価値があるかということを本質的に追求し、全てがつながることを前提に具体的に考察していくのだ。例えば自社の最大のコンテンツが「現場の改善力」だったとしよう。最も恩恵を受けるのは顧客だけであろうか……いや、自社の従業員、ひいては他社であっても大きな恩恵を受けるはずだ。ではいっそのことオープンにしてコミュニティ化してみるのはどうか。そのためには……と、このように連続的な発想を繰り返していく。
この時重要なのは、今あるデータを可視化してみようという単純なアプローチではなく、どんなデータや情報、または仕組みが「顕在化」すれば良いかという視点も踏まえて多角的なアプローチで考察することである。そしてデジタルの4原則や全てがつながるというコンセプトは、こういった考察にも非常に役立つ。
製造業におけるIoT/IoE戦略立案の基本プロセス (図3)
そしてある程度まで具体的に考察した段階で、一度全体像を俯瞰して見てほしい。さて、あなたの構想は自社単独で実現できる規模の戦略だろうか。もし自社だけで可能と言い切れるのであれば、あなたが属している企業はグループで10万人を超える大企業であるか、構想が従来の枠に留まりバリューシフトされていないかのどちらかである。そして、自社単独で不可能だからと言って悲観する必要はない。全てをつなげて考えるIoE戦略は、他社とのつながり(協業)も必ずスコープに入ってくるのである。
IoTに関連する各社の協業(図4)
図4は製造業とIoTをキーワードとしたさまざまな企業の協業を図示したものであるが、IT企業が中心となった連携や協業の多さが目立つ。筆者の感覚としては、IT企業は概してコンテンツ力に弱く、製造業者は概してデジタルテクノロジ活用に弱い。従って、この両者で補完関係ができることで、製造業×ITの領域に大きな花が咲くのではないかと期待している。
一方でやや不安もある。それは昨今のテクノロジ人材不足である。特に今年はかねてよりIT業界の2015年問題がささやかれており、最大8万人もの技術者不足が予想されている。もし自社のIoE戦略が固まりつつあるのであれば、細部の詰めよりも人材の確保と実行に注力した方が良いかも知れない。良い戦略があっても実行する人間が居なければ意味がないからだ。