デジタルバリューシフト

製造業が躍進--IoTによる戦略のバリューシフト - (page 4)

林大介

2015-05-11 07:00

IoT/IoE価値拡張フレームワーク

 本稿の最後に、自社の持つコンテンツや価値を考察するためのフレームワークを一つ紹介しよう。IoT/IoE価値拡張フレームワーク(図5)と名付けているが、今回は製造業用にアレンジしている。自社の製造する製品、その製品に関するサービス(メンテナンスなど)、その製品に関係するコンテンツ(品質データなど)の3つの価値の種が、どの領域の顧客にマッチするかを考察するためのフレームワークである。General Electric(GE)のジェットエンジンの事例が最も分かりやすいが、簡単に述べると以下の順に価値が拡張されている。


IoT/IoE価値拡張フレームワーク(図5)
  1. ジェットエンジンのメンテナンスを遠隔サポートする
  2. 「エンジンがいつ壊れそうか」の予兆を察することが可能になる
  3. エンジン故障の予測を元に、フライト関連業務の最適化を提案できる

 このフレームワークを使うことで自社が持つ潜在的なビジネスチャンスに気が付くことができるかもしれない。考察の際のコツは、具体的な実現方法を深く考えないことである。どうやって実現するかではなく、何を目指すべきかを考察することをまずは優先してほしい。実現の際には、その価値を具現化するためのアイデアを持った様々な企業の協力が得られるであろう。

 日本の製造業の現場は価値の宝庫であり、その価値とは強力なコンテンツである。ITによる第4の産業革命の波に乗るためには、まずは自社のコンテンツが何であるかを明確に意識する必要がある。本稿で紹介したさまざまなコンセプトやフレームワークを駆使して、第4の産業革命に乗る準備を整えてもらいたい。また、実際に戦略を実行する際にはIT企業との連携が不可欠だが、本来IT企業と製造業では製品作りのアプローチや考え方が異なる。どちらかに合わせるのではなく、長所を融合させて新しいものづくりの礎を築いてもらいたい。日本の製造業とIT企業のタッグは、第4の産業革命の主役になれるポテンシャルを有していると筆者は信じている。

林 大介
シスコシステムズ合同会社 シスココンサルティングサービス マネージャー
電機メーカのエンジニア、通信システムインテグレーターのセールスを経てコンサルティングの道へ。ネットワーク、モバイルを中心とし た戦略立案、新規事業開拓、テクニカルアドバイザリーを中心としたプロジェクトを多数実施。昨今はクラウド、M2M、IoT/IoE などの技術トレンドを背景にしたデジタル戦略策定、IoT/IoE新規事業創造、ワークスタイル変革に注力し、各種戦略策定、変革実行支援などを手がける。

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