--「Surface Mini」についての話を伺いました。Microsoftでは2014年に、そのARMベースの小型タブレットを発売する間際まで行きながら、差別化が十分でなかったために、発売を取りやめたと伺っています。新しいデバイスが、十分に差別化されているものどうかは、どのように判断するのですか。
私はMicrosoftに他人の成功をうらやましがってほしくないと思っています。Microsoftには、顧客が本当に求めていることに対して、自分たちが何をしたかを考えてほしいのです。それが、市場を取るために重要なことかどうか、疑問に思う人もいるでしょう。私は、販売量やシェアの観点で最初から大きな成功をする必要はないとさえ思っています。問題なのは、一定の計画のために準備したことが、特定のシナリオに合致するかどうかです。それで、差別化された顧客のシナリオを満足させられているかどうかが分かります。
もっと顧客主導で進めたいのです。ここで言う顧客主導とは、顧客に製品Xついての話を聞き、同じ機能の製品を作るということではありません。何が顧客の生活を本当に変えるかを、考えられるようになることです。GigJamは、世の中を見渡して、他人のやっていることを見て出てきたものではありません。
それこそがMicrosoftのやり方なのです。Microsoft以外に「Visual Basic」を作った者はいません。「Access」も「Outlook」も同じです。われわれ自身がカテゴリを作るか、カテゴリを大衆化したのです。Microsoftは常に、何かとても複雑なものを、非常にシンプルにして誰でも導入できるようにするか、それまで存在しなかった何かを作ってきました。その時、誰かが欲しいと言ったものを作ってきたわけではありません。Microsoftが作ったものが、欲しいと思ってもらえたのです。Microsoftが、自分たちの作るデバイスやソフトウェア、サービスに設定しているハードルは、そういうものです。
--では、スマートフォンに話を戻しましょう。作ろうとしている3つのカテゴリのスマートフォンのうちの1つは、「ビジネススマートフォン」だということですが、Microsoftの作るものは、どこがほかと違うのでしょうか。
ビジネス市場は、実際、Microsoftのスマートフォンの普及がもっとも速い市場です。考えてみてください。Windowsデバイスの魅力の一部は、管理のしやすさとセキュリティにあります。最新のサッカーアプリや、一部のSNSアプリが使えないことは(ビジネスのシナリオでは)あまり問題になりません。重要なのはIDの管理、セキュリティ、保護です。
もう1つ重要なのは、アプリケーション開発が短時間でできることです。Microsoftの場合、「Lumia」デバイスを使って、「Azure App」サービスを利用すれば、ワークフローを自動化するユニバーサルアプリを作ることができます。ビジネスの場面で提供できる価値の面では、ほかには負けないはずです。これこそ、Microsoftが独自の価値を提供できるシナリオです。
私が取り上げた3つの場面は、Microsoftが独自の価値を提供できる場面です。Windowsが好きなユーザーには、ハイエンドデバイスを用意しています。これは単なるハイエンドデバイスではなく、「Continuum」のようなものもサポートしています。ビジネス顧客にとっては、管理しやすく、セキュリティを確保しながら、エンドポイントにカスタムアプリを展開できるかどうかが重要です。低価格スマートフォン市場では、OfficeとSkypeが使えることを重視しました。初めてスマートフォンを買うユーザーにとっては、SkypeとOfficeのためのデバイスのように感じられるはずです。これらは、われわれが独自性を発揮できる分野だと思っています。そこを起点として成長していきます。