若松氏:ユーザー部門から見ると、パブリッククラウドに比べてオンプレミスがダメだと言う理由に、リソースを利用するまでに時間がかかるという話もよく聞きます。パブリッククラウドはクリックだけで必要な容量が手に入るのに、オンプレミスは申請書を紙で回していたりと。
システム統合である程度プロセスをシンプル化することはできますが、サイロになっている今の資産を活用しながら利用プロセスをシンプル化したいというときに、SDSが有効です。SDSには、サーバ上でストレージサービス機能を提供するSDSのほかに、ストレージハードウェアの管理インターフェースを抽象化して一元化するコントローラとしてのSDSがありますが、コントローラとしてのSDSを導入することで、一つのインターフェースで多様なストレージのリソースをシンプルにクラウドサービスライクに利用することが可能になります。
それをクラウド間に広げて、一つのインターフェースで共通の承認プロセスの元でハイブリッドクラウドを使い分けることも可能になります。それができるのは、SDSのストレージサービスとコントローラが分離独立しているからです。
富士通 プラットフォーム技術本部 プロダクトソリューション技術統括部シニアディレクター 荒木純隆氏
荒木氏:SDSに取り組む企業の中には、ウェブスケールのスケールアウト性能が必要という企業もあれば、ベンダーの縛りから逃れたいという企業もあります。後者の場合、(分散ストレージ技術)「Ceph」のようなオープンソースに向かっていくのではないかと思います。その間をつなげる製品として、Ceph対応のストレージ専用機といったものも必要とされるかと思います。
波多野氏:IBMも重要なオープンソースプロジェクトに多額の投資を行い、コミュニティへの貢献と自社製品への組み込みを進めています。一方で、基幹系システムに接続して使うことを念頭に置いた場合、コア技術には接続性が実証された技術が不可欠だと認識しています。
つまり、実績に基づく信頼性のある技術をベースにして、オープンな技術への対応を順次進めていくという考え方です。2月に発表した「Spectrum Accelerate」は、ハイエンドストレージに組み込まれていた機能を切り出してソフトウェアとして提供する業界初のSDS製品となっています。
若松氏:EMCは自社開発、オープンソースの両方のアプローチを進めています。ストレージは元々ベンダーの独自技術の塊だったこともあり、オープンソースのストレージは機能成熟度がそこまで追い付いていません。現時点では残念ながら性能などいろいろと課題があります。そのため、サービスを提供するSDSは自社開発で品質を保持しています。
コントローラSDSは「ViPR」という製品をオープンソース化して、「CoprHD」というプロジェクトを立ち上げて推進しています。こちらも機能成熟度と実績の上でも枯れてきた段階で、オープンソース化しました。コントローラにはさまざまなストレージとの接続性が求められるため、将来にわたって継続的にユーザーの選択肢に関するニーズにスピーディーに対応していくための最良の手段として、オープンソース化がベストだと考えたわけです。
荒木氏:ハードウェアがSDSに与える影響には大きいものがあって、ストレージ専用機を追いかけるかたちでSDSの開発も進んでいくでしょう。例えばデータのメタ情報の扱いやインターフェースの高速な切り替えなど、現在はストレージ専用機でないとできない部分があるわけですが、そうした部分も数年後にはSDSでもできるようになる。
そうなれば、ミッションクリティカルなところまでSDSが入り込んでくる可能性はあります。また、ストレージとしての進化とは別に、(IaaS環境構築管理ソフトウェア)「OpenStack」など上位レイヤとの連携など、現在のIT環境で使い勝手を良くするための開発もSDSでは活発に行われています。
日本アイ・ビー・エム IBMシステムズ・ハードウェア事業本部 ストレージ・システム事業部長 波多野敦氏
波多野氏:SDSでどこまでストレージ専用機をコモディティ製品で置き換えられるかというのは興味深いところです。仮想化はサーバの方が先行しているわけですが、すべてコモディティなx86サーバになったかというと、そうはなっていない。
例えば、銀行のオンライン業務など、高いRAS性能(信頼線、可用性、保守性)が必要とされる領域ではメインフレームが純然と必要とされており、果たしてストレージではどうだろうと考えてます。
小島氏:ストレージの世界はIAサーバ以上にコンサバですから、専用ストレージがどこまでも生き残るというのは堅いのではないでしょうか。業務ワークロードごとに専用ストレージとSDSを上手に使い分けてシステム全体のコスト削減することが肝要でしょう。
若松氏:サーバ並列型のSDSではIOPSを高速化することはできますが、レイテンシは速くなりません。ですから、安定した低レイテンシを提供できるストレージ専用機はなくならないでしょう。
また、SDSはストレージ専用機の競合ではなく、専用機の利用も促進します。ストレージ専用機だろうがサーバベースのSDSだろうが、同じ手順でリソースを利用可能にできるからです。バリバリ速いストレージ専用機も簡単に使えるようになります。