店舗とオンラインストアなど、あらゆる販売チャネルや流通チャネルを統合する「オムニチャネル」という視点でも、ソーシャルメディアで蓄積したビッグデータは有用です。多くの企業が、店舗やネットなどのさまざまなコンタクトポイントのデータを、例えばユーザーのサイト内行動履歴、検索履歴、購買情報といったデータを一元管理して顧客にフィードバックする「DMP」に入れて、統合しようとしています。でも、そもそも統合する前提で作られていないシステムやデータを集めて統合しようとしても、うまくいかないのではないでしょうか。
ところがソーシャルメディアの場合は、アプリケーションやサービスを使うユーザーの行動を簡単なストーリーに仕立てる「カスタマージャーニー」が全部ひとつのIDやアカウントでひも付けされています。「CM見たよ」「ほしいよ」「買ったよ」「商品はここが良かった/悪かった」などです。このため、カスタマージャーニーをデータ中心で作るには、ソーシャルメディアが非常に適しています。ただ、これがあまり理解されていないのが現状です。
これまでのクチコミ分析は、たとえばコカコーラに関するツイートが何件、「ネガポジ(ネガティブ・ポジティブ)の判定」などが指標でしたが、今ではコカコーラに関してつぶやいた「人」について分析するようになってきています。一連のツイートからその人のカスタマージャーニーを分析し、プロモーションに役立てるような「人物像」をつくることも可能です。
――ホットリンクが注力していることは。
2つあります。ひとつは、買収した米国のソーシャルメディアデータの提供事業を営むEffyisとの営業的、技術的、人的な融合です。もうひとつは、「超一流」の人材の採用です。まず、Effyisを買収したことにより、これまではクライアントが日本企業だったのが、IBMやOracle、Salesforceなど世界のビッグデータ製品やサービスのトップ企業になったことで、顧客も市場も変わりました。日本市場からグローバル市場になったわけです。
そのグローバル市場で、リアルタイムのデータストリーミング技術を持つSocialgistと、ビッグデータをリアルタイムで解析する技術を持ったホットリンクが合わさります。Socialgistのデータストリーミングの反響をホットリンクがリアルタイムに分析して、業種、業界ごとに最適なソーシャルビッグデータの形式や分析、活用手法を確立・進化させることができるという期待を持っています。ユニークな存在としてデータの流通レイヤで市場を獲得できる。それをグローバルで販売することは、チャンスだと思っています。
もうひとつは、「超一流」の人材を集めることです。ソーシャルのデータのビジネス価値はまだまだ顕在化してない部分があるので、今後もっと価値が高まり、大きく飛躍できると思っています。
一流の人材を集めるのは難しいと思います。ただ、これだけ可能性がある事業で、ビッグデータやIoT、人工知能、さらにビッグデータを持っている会社は多くありません。そこで、ものすごく広がったデータを世界規模で見る舞台が整っているというわれわれの事業領域がいい人材を集めるポイントにはなると思っています。
本当に優秀な技術者が日本にずっといるでしょうか。優秀なのだから、世界規模でサービスを提供している会社で、世界の技術者とコラボしてほしい。従業員の8割が外国人でも構わないと思っています。
――IoTはどの部分で関係してくるのか。
スマートフォンもIoTデバイスです。ビッグデータを流通している中で、ソーシャルデータが一番使いやすい。データがオープンに集まりますし、競合のデータも取れます。それを分析したい会社とAPIでシステムがつながっているわけですから、簡単に世界へ向けて販売するチャネルを増やせるわけです。このアドバンテージを利用して領域を広げることも画策しています。
われわれが今扱ってる情報というものはブログ、掲示板、ウェブサイト、位置情報サービス。位置情報サービスということになると完全にIoTの領域になっていく。脈拍などのデータやマラソン中のツイートなどの中にもIoTデータは含まれてきています。