1番目の点については広く報じられていたことなので余計な説明は必要ないと思う(二酸化炭素の2大排出国が本腰を入れることになったため、12月上旬にパリである温暖化対策会議="COP21"は比較的すんなりと話がまとまりそう、といった見方も目にする(*2)。
2番目の中国政府の指針については「新しい集合住宅には必ず充電設備を設置すること」「公共の駐車場などでは最低10%をEV用(兼用?)とすること」といった具体的な数字も示されている。また政府がなんらかの形で助成金を出して設備設置を促すことになるらしい(*3)。
3番目のChina Towerの話は、国営の携帯通信大手3社が構築してきたネットワークインフラの部分を、新しいJV会社(3社が株主の合弁企業)に譲渡させて管理するというもの(*4)。携帯通信会社が基地局などの部分をいったん他社に移管して、その後は設備を借り受けて使うというのはさほどめずらしい話でもない(例えば米国にはAmerican Towerという大手のネットワーク管理会社があって、ここの設備をVerizonやT-Mobileが共用していたりする(*5)。
中国の場合は、このJV設立を通じて大手3社の重複投資を抑えるという政府側の思惑もあるようだが、さらに面白いのは、「中国政府がChina TowerにEV充電網の整備を担当させることにした」というところ。携帯基地局なら全国にあるし、また電源(電線)もデータ通信用回線もすでにあるから、それを使ってやれ、ということだろう。
また、このChina Towerに、China Reform Holdingsという政府直轄の投資会社も少数株主として参加するという。China Reformはもともと国営企業の合理化・再編を進めるためにつくられた会社だそうで、中国政府としてはここを通じてChina Towerの経営に影響力を行使し、充電スタンド網の構築に確実を期すということだろう。
なお、China Towerで管理することになる携帯基地局の数などに触れた記事は目にしていないが、同社の評価額が推定360億ドルというところからすると、充電ステーションの潜在的な候補地は相当な数にのぼる可能性も考えられる。
自動車が大気汚染をはじめとする公害・環境問題やエネルギー問題などの大きな要因の1つであるのは中国に限ったことではないが、いまの中国の場合は、さらにそれが国内での少数民族問題(新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒と漢民族との摩擦・衝突。(*6)や外交問題(例えば、9月半ばにタイのバンコクであった中国のイスラム教徒による爆弾テロなど。(*7)につながっている。
「ほとんど人も住んでいないような土地にどうしてこだわるのか……」 といった疑問が前々からあったが、「新疆ウイグル自治区内には中国国内の石炭資源の約40%、石油資源の約25%がある」と聞けば納得がいく。また最近では、あのあたりのイスラム教徒のなかからISISに合流する者が出てきはしないかといった心配の声もあがっているようだ(*8)。
これらの大きな問題、やっかいな問題の緩和にEV普及がどの程度影響を及ぼすことになるのかなどは現時点ではわからない。いくらEVが普及しても、相変わらず露天掘りで採った石炭を燃やしてつくった電気を使っているようでは却って逆効果という可能性さえ思い浮かぶ。
ただ、そうした問題の緩和に少しでもつながり、同時に新たな産業の育成にも役立ちそうとなれば、中国政府がEV普及の前提となる充電スタンド網の展開に本腰を入れて取り組んだとしても不思議はないと思われる。