Chen氏が言うように、同社は1年前の事業戦略説明会で統合ソリューションに取り組むことを表明している。ただ、当時はまだ先に示した図のようなコンセプトまでは固まっていなかった。今後は今回確立したCTDが、同社の事業戦略の柱になっていくものとみられる。
ただ、こうした考え方は同社と競合するシマンテックやマカフィーなども打ち出してきている。その意味では、ライフサイクルマネジメントが企業における今後の情報セキュリティ対策の核心といえそうだ。
「マイクロソフトはERP市場でナンバーワンを目指す」 (米Microsoft Pepijn Richter Dynamics製品マーケティングディレクター)
米MicrosoftのPepijn Richter Dynamics製品マーケティングディレクター
日本マイクロソフトが先ごろ、クラウド型統合基幹業務システム(ERP)の最新版「Microsoft Dynamics AX」を提供開始すると発表した。米国本社のDynamics製品マーケティング責任者として発表会見に臨んだRichter氏の冒頭の発言は、新サービスの普及拡大に向けた意気込みを示したものである。
マイクロソフトがERP製品として注力するDynamics AXの最新版は、ユーザー単位の月額サブスクリプションモデルとして提供するパブリッククラウドサービスである。Richter氏によると、「最新版はこれまでのオンプレミス版を単にクラウド上へ移行したのではなく、(PaaSである)Microsoft Azure上でクラウドネイティブに仕立て上げたもの」だという。
その内容や特長については関連記事を参照いただくとして、ここではRichter氏の冒頭の発言に注目したい。実は、同氏の“ナンバーワン宣言”は会見の質疑応答で筆者の質問に答えたものである。
それというのも、2年半ほど前に、Dynamics製品も含めた当時の米国本社ビジネスソリューション事業部門の責任者が来日して会見を行った際、今回のRichter氏の発言と同様に「ERP市場でナンバーワンを目指す」と語っていたからである。その姿勢は今も変わっていないか、と聞いたのが筆者の質問である。
グローバルなERP市場は、SAPとOracleが激しい競争を繰り広げており、両社ともクラウド展開にも積極的に乗り出している。さらに、最近では新興ベンダーによるクラウドネイティブなERPも注目を集めている。そうした中でマイクロソフトの存在感は、まだまだ小さいイメージがある。果たして今回の最新版で存在感を一気に高めることができるかどうか、マイクロソフトにとっては正念場である。
Richter氏は筆者の質問に対し、冒頭の発言を行ったうえで、「Dynamics AXは既に中堅企業向けを中心に確固たる競争の優位性を保持している。さらに大手企業でも、例えばSAP製品をコアにしながらDynamics AXをその回りの管理機能として利用していただいているケースが増えてきている。マイクロソフトそのものも実はそうした取り組みを行っており、成果を上げてきている。とりわけ、こうした使い方や中堅企業向けでは、必ずナンバーワンになりたいと思っている」と語った。
今回のクラウド版Dynamics AXの登場で、ERP市場の競合状況が変わるかどうか、注目しておきたい。