次世代CIO

デジタル化への処方箋--IT部門の創造的破壊のために - (page 5)

高橋秀

2016-04-26 07:00

どこから始めるべきか

 やり方は1つではありませんが、2つのアプローチに沿って、試験的なプロジェクトを実施しすることを推奨します。効果測定と机上では分かりにくい課題の抽出をした後、スコープを広げて徐々に改善範囲を広げていってみてはいかがでしょうか。

 1つ目のアプローチ:コアの最適化については、運用・保守を担っている基幹システムやその他情報系システムに対して、どれだけのリソースを割いているのか確認し、必要なら外部のITコンサルタントなどを使って、現場以外の目線でそれを評価してみてください。そこには必ず非効率が潜み、手段が目的となってしまっている、システムや作業手順の問題で人が補っているといったケースが発見できるはずです。そこから小さくとも改善を計画していくと進めやすいでしょう。

 あるいは、運用保守切れを理由に「AS-IS」(現状)とTO-BE(あるべき姿)が同等で機能改善や業務効率化を伴わないアプリケーション移行は止めるべきです。これでは移行分が単なるコストです。攻めに転じるとは、投資からリターンを得ることにほかなりませんので、アプリケーション移行を通して間接コスト低減だけでなく、機会損失を減らすことで直接的な利益向上にも寄与できるはずなのです。

 2つ目のアプローチ:ビジネス革新については、まず、新しいやり方にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。重厚長大なシステム構築の経験が長いと、超短期リリースを想定したシステム開発に対して懐疑的な気持ちになるかもしれませんが、決して短期リリースだから品質が悪いわけではなく、徹底したスコープ管理、変更管理、継続的インテグレーションによるソースコード保全といった方法論とツールのたまものなのです。

 既存ビジネス向けのシステム開発でもよいですし、新規ビジネスの立ち上げに伴うものでもよいですので、利益を生むエンジンとしてデジタルを活用するアイデアを実現させるべきです。先にも述べた通り、小さいからこそ失敗が許容され、何度も経験する中で本当の成功が生まれるということを忘れずに取り組んでみてください。

 どちらのアプローチも、どこかのタイミングで、できれば最初に、ビッグピクチャー(全体像)をきちんと書くこともポイントです。個別の取り組みは本来ビッグピクチャーに基づいているべきですし、全社基盤(エンタープライズアーキテクチャ)も整理していくべきでしょう

 さて、初回である今回は、少し大上段からのトピックとなってしまいましたが、コスト低減と新たなビジネス革新を生み出す2種類のITアプローチを理解して使いこなしましょうというお話をしました。次回は、最新のテクノロジトレンドについて、事例を交えつつ、紹介します。

高橋秀
アバナード株式会社  ディレクター Japan CTIO (Chief Technology Innovation Officer)
マイクロソフトの最新技術を使ったIT企画、システム開発のエキスパートとして、多くのプロジェクトを担当。現在、日本のCTIO(Chief Technology Innovation Officer)としてグローバルと連携し、アバナードのビジョン「業界をリードするデジタルイノベーター」を実践する、エバンジェリストの職務を担う。1975年東京生まれ。1999年中央大学商学部会計学科卒業。 2016年 Sitecore Technology MVP受賞(2年連続)。

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