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ドクター津田のクラウド相談室

クラウド相談室--ある金融機関の質問「データセンター事業の事情が知りたい」

津田邦和(工学博士、NCRI会長)

2016-05-20 07:30

ユーザーの悩みに工学博士として回答

 30年にわたりネットワークとコンピューティング、ASP、SaaS、クラウドの研究開発、モデルプロジェクト構築、日系の大手ITを含めた幅広い企業コンサルティングを手掛けてきた工学博士、津田邦和氏が、ユーザーやプレーヤ―の具体的な悩みに答え、必要な情報を提供することを目的に、誌面上に相談室を設置する。

津田 現在のクラウドコンピューティングは、1960年代のユーティリティコンピューティングから始まり、オンデマンド、ASP、SaaS、クラウドへと発展してきました。その過程において、インターネットの普及により領域を広げ、社会に深く根差したインフラとして重要な位置付けとなり、大きな産業になってきました。

 産業として大きくなってくると、当然ながらビジネスも技術も複雑化することから、ユーザーもプレーヤ―も多様になり、それぞれが知りたい事項も多岐にわたるようになります。あまり表に出ていないような課題や、現場の問題点、技術進展の詳細情報などを伝えていこうと思います。

 また、ここに掲載する質問や相談は、実際の市場やプロジェクト活動において発生したものであり、多くの企業にとって共通点があるものとして紹介します。

「ある金融機関からの質問:データセンターについて」

質問 最近、北海道石狩でデータセンター(DC)事業を展開する企業が、東証一部に上場したと報道されました。また、同DCは今後3倍に拡張し、さらに近いうちに現在の6倍以上の規模になると発表しています。この企業のネット上での業績開示内容も、非常に良い内容です。

 しかし、不思議なことに、一方で首都圏DCの事業者は、DCのラック充足率が低く(つまり十分には埋まっていない)、経営も厳しいと聞きます。東京でさえそれほど厳しい事業にもかかわらず、石狩のデータセンターが大きく拡張し、かつ運営企業の業績が好調というのは、外部からは大変不思議に見えます。背景にはどんな事情があるのでしょうか。

 現在銀行に対して、地方DCへの融資相談があることから、この差について知りたいのですがご教示頂けないでしょうか。

「ドクター津田からの回答」

津田 まず、全体を整理しましょう。

 日本のDCは、約400存在(ただし小規模な企業内サーバルームは8万程度存在)していますが、その中で約70%が首都圏に集中しています。その中にはすべてではありませんが、ご指摘のような苦しい経営状況にあるものが多いと聞いています。ここで、首都圏のDCで経営が厳しい理由と寒冷地のDCで好調な背景について説明しましょう。

 まず、首都圏のDCの経営が厳しくなっている理由には高コストと老朽化がありますが、そのほかの原因も考えられます。

 第1にコスト差ですが、土地は地方の100倍以上、人件費はおおよそ1.3倍以上になると推定され、さらに東京は温度が高温ですから、冷房電力も大きなものとなり、北海道と首都圏DCを比較すると非常に高コストになる例は多いと考えて良いでしょう。

 また、実は北海道のようなローカル地域では、DCに公的支援があり、これも大きなコスト差を生みます。このコスト差は10%ではなく、50%以上の大きな差となると考えられます。ただし、価格は別で、利益を乗せて調整されると考えられますが、それでも強く競争力のある価格設定が可能です。

老朽化と技術革新

 第2に首都圏のDCはサーバルームを含めると老朽化が激しく、15年以上前のものが80%を超えていると考えられますが、これはいくつかの差別化要素を生みます。まず、この15年の技術の発展は目覚ましく、古い設備の空調効率やUPS効率は圧倒的に高いものとなっています。さらには通信機器やそのほかの設備も高性能化・安定化しつつ、かつやはり低コスト化しており、トータルで低コスト化しています。

 また、耐震免震などの性能も向上していますので、顧客はより新しいDCを好むことから、老朽化した首都圏DCは空きが多くなるリスクが高くなります。

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