Azure導入の勘所

クラウドを再学習するタイミングは今--Azureの現在地 - (page 2)

高橋秀

2016-06-10 07:00

クラウドを再学習するタイミングは今

 クラウド以前から一部のクラウドサービスが提供する機能と同等のものは世の中にありました。例えば、サーバを複数の契約者が共有利用するサーバホスティングサービス(またはハウジングサービス)や即ビジネス利用可能な機能を提供するアプリケーションサービスプロバイダー(ASP)です。

 これらは現在のIaaSやPaaS、SaaSと利用者目線では同様のものです。クラウド初期にはこれらが3つのサービスレイヤとして語られ、利用されてきました。現在はどうでしょうか。本質的には、ハードウェアに該当するIaaS、OS/ミドルウェアに該当するPaaS、パッケージソフトウェアに該当するSaaSという切り口に変化はないのですが、特にIaaSにおけるオープン化とPaaSにおけるサービスの多様化には目を見張るものがあります。

 Red Hat Linuxサポート、SAP稼働サポートなど、Microsoft Azureのベンダーの壁を越えたオープン化はとどまるところを知りません。また、パブリッククラウドとしてのAzureとプライベートクラウドとしてのAzure Stackにより、配置先の環境を問わずに同じ手法でクラウド上での開発が実現できるようなプラットフォームとしてのスタンダードの地位を確立しています。サービス粒度としては、PaaSとSaaSの中間程度、マイクロサービスと呼ばれる単位でのアーキテクチャ設計や開発が今後は主流になっていくものと思います。

 また、Azure IoT Suiteに代表されるようないくつかのサービスを組み合わせた特定業界向けのプラットフォームとしてもAzureは既にリリースを始めています。大量のデータ自体に今や価値はなく、そこから洞察を得ることがポイントになりますが、IoTとデータ分析を語るうえで外せないのがAzure ML (Machine Learning)です。

 今までデータサイエンティストなど特別なスキルを持ったエンジニアによるデータ分析モデルの立案や構築が、既存・既知のモデルであれば実に簡単に実装できるようになりました。まだディープラーニングといえるレベルのものはないのでこれからの発展に注目が必要ですが、少なくともモデルを介したデータ処理については、Azure MLは1つのスタンダードとなってきているのではないでしょうか。

 ここまでいくつかご紹介した通り、今やクラウドとして提供されるサービスは、その粒度、複雑度、ビジネスへの直結度といった多くの点でクラウド初期とは一線を画しています。クラウドに対する思い込みはいったん捨て、最新のクラウドについて再学習するべきタイミングなのです。

2016年6月現在のMicrosoft Azure サービス(出所 日本マイクロソフト)
2016年6月現在のMicrosoft Azure サービス(出所 日本マイクロソフト)

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