朝山社長によると、こうした勘定系への適用事例は他社にはないという。「改ざんできない取引の記録、つまり決済系サービスに適用したのは当社だけ。他社はスループットの低いものが多い」。システムの構築費用や開発期間の大幅な削減は、仮想通貨・資産の発行、取引、決済サービスの提供を容易にすることでもある。
特に、アララのような非金融業の利用を期待している。既存の金融機関は規制があり、採用に慎重になるのに対して、「電子マネーなどを発行する企業はアグレッシブ。競合に打ち勝つために、安価に構築できるブロックチェーン技術を選択する」(朝山社長)。
ブロックチェーン構築プラットフォームには、mijinのようなプライベートとパブリックがある。無数のサーバなどで稼働するパブリックの1つにオープンソースプロジェクトNEMがある。実は、そのNEMとプライベートのmijinは共通の仕様である。NEMの中心的な開発メンバーの3人がmijinの開発に参画したからだ。
「不特定多数が使うパブリックは勝手にバージョンアップできないのに対して、プライベートは性能の限界への挑戦などさまざまなことに取り組める。3人は、そんなことを理由に当社の開発に加わった」(朝山社長)。
しかも、NEMのオープンコミュニティに参加する約3000人の技術者がmijinの普及を間接的に支援してくれる。テックビューロが新機能を先行して開発したら、コミュティの技術者らが同じ仕様のパブリックな自国版を出し、世界中に広がるからだ。41歳になった朝山社長は今後、海外拠点を設置し、国内での成功モデルを海外にも売り込む考えだ。
- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。