--これまでのHRTECHと呼べるようなソフトウェアとの違いは。
われわれが「テック領域のプロダクト」を意識し、個別にカスタマイズをしない点、そしてAIを搭載している点です。これまでのHRTECHは紙をシステムに変えた、いわゆる業務システムの延長線上にあると思います。そのような単純な共通課題を打ち込んでいくような製品は、個社ごとにプロダクトのカスタマイズをはじめてしまうとSIerやコンサルビジネスに近くなりそうです。
こうした、営業など人が介在しなければ成り立たないサービスはいわゆる「テック領域」ではないと認識しています。人を介さないと申し込みができないというのは、物を売っているのと同じということで、スケールしづらいと考えます。
例えばGoogle AdWordsは、申し込みから利用、退会まで顧客だけでサービス利用が可能です。こうした「人がどの程度介在しているかどうか」という点で、テック事業かどうかは割と差別化されているように感じています。プロダクトを販売、利用するにあたって人の手を介さないように仕組み化をしていきたいのですが。私たちも現状では、人がいないと問題解決ができないという状況があります。
また現時点ではサービスの共通化の問題があります。「どんな会社でも使えるようなものにする」ということは人事であれば人事の本質を抽出してソフト化する必要があった。しかし多くのソフトはそれがまだできていないのではないかと考えます。組織ごとに思想やカルチャーが違いますから、ある程度の流動性、拡張性をもたせなければいけない。
しかし、私たちは「大手企業だから」という理由だけの要望で、プロダクトは変えない。そのスタンスは貫いています、個別商売になってしまうと受託制作と変わらず、世界で展開できないと考えています。
例えばHRMOSの新卒への対応は社内でもよく出てくる議論です。ただ、「いろいろできるけど特徴のないサービスはうまくいかない」と考えています。「範囲は限定されているけどもの突出して良い」という方が、サービスとしては売れるし使える。
私たちは一度、中途採用で振り切ると決めました。新卒対応させることはできますが、さまざまな企業が新卒一括採用を中止する発表もあったように、機能と内容は今の時代に求められるものにしたいと思います。グローバルで見ても新卒一括採用というような文化はありません。
HRMOSではAIを実搭載しています。そうなると他のプロダクトとは似て異なるものになっていきます。
開発体制を内製化で進めているのですが、外注をしてしまうと、結局仕様書に沿って作ってもらうという関係性ができてしまいます。これからはあらゆるフィードバックをすぐに取り入れ、アカデミックな人間も含めて議論をしながら、チューニングすることが必要になっていくと思います。いわゆる「動的に方程式を解いていく」ことが重要で、このような体制で取り組むからこそ、プロダクトとしては他のソフトとは、別物になってくるのではないかと思います。
たとえば機能として用意されたサービスをただ使うだけだとすれば、情報がどんどんインプットされます。その情報は検索、判断につかえますが「こういうスキルを持った人がもしかしたら活躍するのではないか」という発想は今までのサービスでは人間が担う必要があります。
私たちはここを変えようとしています。「このスキルを持っている人はすごいよ」ということをサジェストしていく機能をAIに持たせようとしています。
情報が貯まっていくと「この人は絶対採用した方がいい」とAIがいってくるわけです。いわゆる人事や業務管理ソフトのようなものではなく、経営が判断する有能なコンサルタントがいるような感じです。
AIを搭載したHRMOSのイメージ