以前、技術の発達に伴い人の関わり方が大きく変わったものとして音楽を取り上げ、音楽プレーヤーの進化とそれによるUX(ユーザー体験)の変化などを論じた。同様にその最初の発明から技術の進歩により使われ方などが大きく変わってきたものとして、写真がある。
音楽プレーヤーの場合は「用意されたコンテンツを鑑賞する」という受動的な側面を主に取り扱ったが、写真の場合は「個々のユーザーが撮影する、される」ということが重要になる。
そして、自分で記録したものをどう扱うか、ということにも多様性が出て来る。以下、まずは歴史をさかのぼったところから見ていく。
写真技術の黎明期
ピンホールカメラの原理
人間が普段見ているのと同じような光の像を壁や擦りガラスに映す、いわゆるピンホールカメラの原理を用いた装置が作られたのが写真技術の源流である。その装置は「カメラ・オブスキュラ」(暗い部屋、の意)と呼ばれ、これが「カメラ」という言葉の語源になった。
初期はその像の記録をできず、人が像をトレースする、という絵画のための補助としての使われ方をした。
19世紀になって、「当てられた光の明るさを記録する」という技術を組み合わせることで初めての「写真」が撮影された。>
最初の撮影は明るい日中の屋外で8時間かかる、というものであったが、ほどなく改良され、数十分、そして数秒程度へと進歩していった。
「カメラ・オブスキュラ」(暗い部屋、の意)
欧州では、画家に肖像画を描いてもらうことの置き換えとして「肖像写真」を撮ることが普及したらしい。
最初の写真は複製を作りづらい形のものであったが、改良のために開発されたさまざまな技術のひとつに記録時に像の濃淡が反転するものがあり、それを使ってもう一度他にその像を写すことでひとつの記録原版(ネガ)から多数の写真を複製できる、というものが現れた。これは言うまでもなく写真の用途に大きな広がりをもたらした。