山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

いつ何の有料コンテンツに中国人は金を落とし始めたか

山谷剛史

2018-01-17 07:30

 年末の記事「いつ中国のネット業界はコピー天国から脱したのか」は、ニーズがあったのか好評だった。この記事では海賊版天国と呼ばれた中国で、いつどのタイミングで何が起きて海賊版コンテンツが表面上目立たなくなり、模倣サービスが目立つ状況からオリジナルサービスが目立つ状況に変わったのかを紹介し、その記事では無料正規版とはいえ、どのようにユーザーが海賊版から正規版に誘導したのかを書いた。

 ではユーザーはいつどのタイミングで正規版有料コンテンツを買うようになったのか。00年台より普及した携帯電話やPCにおいては、携帯電話の着信メロディであったり、PCのキラーソフトであったインスタントメッセンジャーの「QQ」のスキンからお金を落とし始めたという利用者が多いだろう。

 ネットカフェに通い、オンラインゲームを遊んだ人もゲーム内マネーを支払っていた。2009年にはmixiでブレイクした「サンシャイン牧場」のような農場育成ゲームが登場し、QQユーザーの多くがアイテム目当てに金を落とした。

 10年台に入ると、動画サイトは先の記事に書いたように海賊版から正規版配信メインに転換し、有料会員サービスを模索する。とはいえ、これまで無料だったものを有料にしてユーザーが「わかりました」とお金を落とすわけではない。そこでセットトップボックスやスマートテレビに半年ないし1年のコンテンツ無制限利用料金を含めて販売する動きが出た。また低価格な費用で利用できる有料サービスから徐々に買われるようになった。

 コンサルティングの北京欧立信信息咨詢中心の調査によれば、動画サイトの有料サービス利用者は2013年まではほぼいない状況から、2014年には1000万人、2015年には2000万人、2016年には約5500万人(推定)、2017年には7000万人(推定)と増えていくとしている。

 この背景としては支払環境の変化やネット動画のコンテンツ強化や有料会員向けに更新タイミングを早くするというシステム側の変化や、利用者側の心理の変化がある。ヒアリングすると、各個人の経済事情が数年前と比べて明らかに裕福になっているという意見や、皆がコンテンツにお金を落としてるから自分も払う、といった意見を聞いた。

 とはいえまだ現状では多くのクリエイターに十分な対価が落ちない状況であるようだ。インターネット大手の「騰訊(テンセント)」は、自社の中期経営計画に基づき、5年間で数百億元を投じて、自社サービス向けコンテンツクリエイターを養成しようとしている。数年後に中国でコンテンツのエコシステムが出来上がり、多くのクリエイターがコンテンツ作成で稼げるまでは、テンセントが補助金を出していくとも解釈できる。

 一方で1、2年の新しい動きとして、ネット有料相談サービスをはじめ、有料の最新トレンドを知る有料情報サービスを、お金を払ってでも得ようとする人が増えている。調査会社のiResearchが発表した「2017年中国知識付費市場研究報告」によれば、これら情報提供サービスの利用者数は2017年んは1億8800万人に、2018年には2億9200万人になると予測している。

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