中国ビジネス四方山話

高齢者にECでモノを売る時がきた

山谷剛史 2018年02月27日 07時30分

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 中国の高齢者がECサイトでモノを買うようになってきている。数年前まで中国のインターネットでの消費は、大学生から40歳くらいまでだったが、近年は高齢者もネットで消費するようになったようだ。中国大手ECサイトの「京東(JD、ジンドン)」とメディアの「南方都市報」が、高齢者のEC購入についてまとめた「2017年老年人網購消費趨勢報告」でその様子がわかってきた。同レポートの対象となる「高齢者ユーザー」は56歳以上の京東ユーザーとしている。

 それによると利用者はこの2年急激に伸びているとし、かつ利用額平均は世代全体の平均の2.3倍と旺盛な消費をしているという。

 具体的に見ていこう。利用者増に関しては、2015年と2016年と2017年の第3四半期を比較すると、EC利用額について2016年に第3四半期は前年同期比79%増、2017年は同86%増となっている。これは全体での伸びよりも大きい。アプリや微信(WeChat)からの利用が多いそうだ。

 また地域別では北京や上海など大都市での利用が多く、高学歴な高齢者の利用が多く、男女比で差があり、男性のほうが利用率が高いが、この2年でその差を縮めているとしている。またキャンペーンやセール情報に乗りやすいという傾向がある。これはかつて中国のインターネットの発展で通ってきた道だ。やがて中国全土の都市の高齢者に、男女比がほぼ同率に、学歴を問わず利用するようになる。つまり利用者がもっと多くなる。

 高齢者の平均利用額が高い理由は、「家電」や「家具」といった平均単価の高い商品が人気であること。若い世代が多数を占めるECサイト利用者全体ではスマートフォンや小物などが人気であることとは対照的だ。確かに中国人の老人宅を訪問する機会があると、そこで家電を見せられることが多いように思う。また高級茶の購入や、栄養補助食品系が増加する一方、酒類の増加は落ち着いているという。つまり健康志向が強まっているようだ。

 また、書籍の購入も目立って増えてきた。2015年には高齢者向けの書籍は京東の書籍全体の売上の0.1%もなかったが、2017年には17%に。また孫向けの学習教育本も買いだしたことから2017年に12%まで押し上げた。中国の書店を訪れると、大人向けだけでなく子供向けの絵本においても翻訳された日本の絵本が売られている。

 さらに2017年の傾向として、高齢者が航空券やホテルなどもネットで予約する傾向が強まったという。高齢者が自身で手配し、日本などに足を運びにくる日もそう遠くないかもしれない。

 ところで調査対象となる高齢者の所得はどうなのか。毎月もらえる退職金について、3000元(約52000円)未満が24.9%、3000〜4999元(約52000〜86000円)が35.2%、5000〜7999元(約86000〜14万円)が28.6%、8000元(約14万円)以上が11.4%となっている。ECサイトでの消費については、月500元〜1499元が43.5%、月3000元以上が5.5%となった。何もしないで毎月これだけもらえる人が、ECサイトで消費し始めたわけだ。

 最後に筆者のまとめと分析を書いていく。一般的には高齢者は子供の家族と同居しているので、お金に困ることはない。パソコンやスマートフォンはこれまで子供世代=社会人世代のおさがりを利用し、利用用途も動画再生や微信(WeChat)やQQなどのインスタントメッセンジャーや、写真の閲覧くらいしかなかった。

 ECサイトを利用するとなると、パソコン向けの支付宝(Alipay)での支払いや、ECの利用に不信感があったことから店との交渉が必要とされた。特にパソコンは一家に一台だった。銀行口座と紐づけた支付宝(Alipay)アカウントは子供世代しかもっていないことから、高齢者世代の利用は難しかったのではと思う。逆に欲しいものが買えるようになったのは、スマートフォン向けの微信支付(ウィーチャットペイ)や支付宝(アリペイ)が普及して、誰もが電子決済ができるようになったことが大きな要因のはずだ。

 学生世代や社会人世代が親にお古のパソコンやスマートフォンを渡しても本音は喜んでいなかったのかもしれない。子供世代が気遣っていれば、親の気持ちを分かっていれば、ECサイトを使ってでも高齢者向け書籍を買ってあげたはずなのだ。高齢者がECサイトを利用し始め、高齢者向け書籍が一定の売れ行きを見せたことがその証だろう。ようやっと高齢者は欲しいものが買えるようになった。

 特に高齢者は今の若者よりも日本ブランドに対して良いイメージを記憶に残している。高齢者の間で読まれる新聞では、日本製をうたう漢方薬や健康食品(実のところ日本製でないことが多い)の広告がしばしば出るほか、大型連休の前には日本旅行など海外旅行の広告も出る(そして高齢者でも海外旅行のニーズは高い)。日本製品や日本旅行に対する印象がよく、金払いがよいからこそ、これまでになかった高齢者にECで売り込むというのも今後は有用な中国戦略となりうる。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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