中国ビジネス四方山話

シェアビジネスブームで登場したシェア傘が最低評価の理由

山谷剛史 2018年03月13日 10時12分

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 シェアサイクルで一気に話題となった中国のシェアサービス。その後スマートフォンのバッテリをレンタルするシェアバッテリやシェア傘をはじめとして、さまざまなシェアサービスが登場した。シェアバッテリはシェアサイクルほどではないものの、そこそこ市民権を得て、モールやレストランなど様々なところに設置されるようになった。シェア傘は誕生して約1年が経過し、「有傘」「春筍雨傘」「摩傘」「魔力傘」「e傘」「漂流傘」「jj傘」「uu傘」といったサービスが次々と登場した。

 「中国共享経済研究報告(中国シェアビジネス研究報告)」という調査レポートがMobDataより今月発表された。ここでシェアサービスの現状を紹介しているが、この中でシェア傘は、数あるシェアサービスの中で「誰も返さずゴミとなっている」とネガティブな評価をしている。今もなお規模の小さなシェア傘サービスが立ち上がっているが、なぜそれでも評価が低いのだろうか。

 それなりに認知されているからこそ、ダメと評価する記事が掲載されている中、成功例を紹介するよりも失敗例を紹介するほうが学べるという考え方もあるので、シェア傘が評価されない理由をまとめて紹介する。

 シェア傘はレンタル傘サービスだ。専用アプリから傘に印刷されたQRコードをスキャンし解錠作業を行い、利用時間だけアントフィナンシャルの支付宝(アリペイ)や騰訊(テンセント)の微信支付(ウィーチャットペイ)を使って電子決済をする。本来はデポジットをあらかじめ支払う必要があるが、一部のサービスでは支付宝の中にある「芝麻信用」の信用スコアを活用し、今までのサービス利用で積み立てたそのスコアが高ければデポジットが無料になるというものもある。モールやショップの出口付近ほか、地下鉄の駅出口や展示場などに置かれていて、借りたら専用の傘置き場まで返さなければいけない(のだが、GPSが内蔵されていない傘が多く、行方不明になったらそれまでだ)。

 中国メディアが分析するシェア傘の必要性がない理由を如何に挙げる。

 「雨が降れば地下鉄の駅出口などで売り子がいて傘を売り出している」――売り子がゲリラ的に売る傘の単価が10〜20元(170〜340円)と安いし軽い。「滴滴(didi)」などの配車サービスやタクシーに乗車する人もいて、シェア傘の必要性がない。「重い」――中国で傘といえば折り畳み傘を使う人が多いが、シェア傘は非折り畳み式のジャンプ傘であり、普段折り畳み傘を使う人からすると重い。

 「デザインが悪い」――家に必ず傘が何本かある中で、それでも借りたくなるようなデザインではない。シェアサービスにありがちな単色やカラフルなデザインはウケが悪い。

 そしてなにより「天気に依存する」――傘が必要なほど雨が強すぎないと使わず、誰もが使いたくなるときには傘が不足する。傘借りた後は返さないといけないが、晴れたときに重い傘を持っていくのは極めて面倒だ。常々必要なものではなく、晴れているときにはシェア傘の存在は邪魔でしかない。雨傘日傘兼用の傘を出すサービスもあるが、それでも評価はよろしくない。最初から雨が降るとわかっていれば雨傘を用意するし、日差しが強烈だとわかっていればマイ日傘を用意するわけだ。突然の予想外の雨にアプリをインストールしてユーザー登録を行うというのも手間がかかる。

 加えて傘設置を事前に関係部署に伝えてないことから、設置してすぐに地元の地域管理業者によって回収されるというニュースや、中国のシェアビジネスにありがちなサポート担当不在のまま、とりあえず設置するだけ設置するという投げやりぶりも報じられた。

 こうした悪条件を乗り越えてもなおシェア傘を借りる人はいるが、その多くは借りたまま返さないようだ。重くてデザインの悪い傘を返却しにいくのは面倒なのだろう。そのデザインと重さから、支払ったデポジットを失ってなお家の中で眠ったままとなっている傘もあるという。信用スコアを下げたくないから、面倒な返却作業を行うというのもなんだか本末転倒だ。

 ただシェア傘を完全に否定できるかというとそうでもない。駅やモールから家に帰るのに借りるには大変不向きだが、個人的には展示場内の屋外移動で傘を使うといった用途では(重いという問題はあるものの)借りてよかったと感じた。単価が安く常に必要とはしていない傘ではあるが、場所を選べば意義のあるシェアサービスとなるわけだ。傘以外でも場所を選べば評価があがるシェアサービスはありそうだ。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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