5年前の今日、米国時間2014年2月4日に、Satya Nadella氏がMicrosoftの3代目の最高経営責任者(CEO)に就任した。当時、筆者を含む多くの企業ウォッチャーは、Microsoftが社外からCEOを迎える代わりに社内の人材を起用したことで、同社は多かれ少なかれ、これまでと同じような道筋を歩むとみていた。しかし、Nadella氏が引き継いで以来、同社は大きく変化している。
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Nadella氏がMicrosoftの企業文化に与えた影響をここで再び取り上げるつもりはない。多数の記事やブログへの投稿記事、さらにはNadella氏自身が執筆した著書「Hit Refresh」などに詳述されているからだ。同氏が行った企業文化の変革は、多くの従業員の共感を呼び、Microsoftの士気は向上しているようだ。
筆者が興味をそそられるのは、Nadella氏の実利主義だ。例えば、成功が見込めないと判断した事業は、早々に損失を抑えようとしている。時代が違ったのかもしれないが、前CEOのBill Gates氏とSteve Ballmer氏は、新しい製品やプロジェクトがその価値を証明できるように、より多くの時間をかけていた印象を受ける。一方、Nadella氏は最初からMicrosoftの強み、すなわちデバイスやサービスではなく、生産性とプラットフォームを重視することを明確にした。
Nadella氏は5年の間に、組織再編や人員削減を何度も実施してきた。CEO就任の数カ月後には、1年の間に1万8000の職を削減する計画を発表した。2017年にはセールス部門を中心に大規模な再編を促し、従業員数千人を削減したと報じられた。2018年にはWindows関連部門を分割している。
Nadella氏の指揮下で、MicrosoftはNokiaの携帯電話事業を買収したが、買収を完了した数カ月後に発表された人員削減の多くはNokia従業員が対象だったとされた。さらにNadella氏と経営陣は、何千台も製造し、プレスへの発表を目前に控えていたとみられる「Surface Mini」の発表をキャンセルを決定したとされる。また、フィットネス端末「Microsoft Band」、スマートフォンOS「Windows Phone」、音楽再生アプリ「Groove Music」の取り組みも中止した。
しかしNadella氏が行っているのは、人員削減と事業縮小だけではない。Nadella氏はこの5年間に、当初は驚きをもって受け止められ、後になって賢明だったと思わせるような企業を買収している。LinkedIn、Mojang/Minecraft、GitHub、Xamarinなどだ。
Nadella氏と彼が率いる経営陣は、「Windows」事業のみではなく、成長するクラウド事業にもアナリストらの目を向けさせることに成功した。Nadella氏は公の場で、Windowsについて語ることは少ないが、「Microsoft 365」やインテリジェントクラウド、インテリジェントエッジを話題にしたいようだ。
Nadella氏がCEOに就いて最初の5年間は、特に社内外でMicrosoftの「悪の帝国」というイメージを払拭する時間だった。オープンソースコミュニティは敵ではなく、味方となった。同社は新たに、多数のソフトウェア企業の提携関係を結び、いくつかの大口顧客を「パートナー」と呼ぶまでになった。
Nadella氏は次の5年間に、新しい多くの課題に取り組むだろう。Microsoftの立ち位置を決める、穏やかな地ならし作業は大方完了した。これからは、同社がWindowsへの依存を断ち切り、クラウド事業とサブスクリプション事業の成長を維持できるのか、試されることになるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。