前回、前々回では、iPhone/ iPod touch向けのサイトを構築するにあたり、気をつけなくてはならないこと、そして実装するときに知っておきたいテクニックといった技術的な側面から解説してきた。幾つか制約はあるものの、PCと同等レベルともいえる高性能のブラウザが実装されているが、PCと同じような感覚でサイトデザインをしても良いというわけではない。モバイルデバイス特有のユーザーインタラクションを理解して、そこから導き出される最適なものは何かを模索していく必要がある。そして、そのヒントはiPhone/ iPod touch製品そのものに隠されている。
体験が機能を超えるとき
インタフェース研究やユーザーエクスペリエンスの第一人者であるドナルド・A. ノーマン博士の著書「パソコンを隠せ、アナログ発想でいこう!(*1)」で、同氏はテクノロジーのライフサイクルについて説明している。
(*1) 本書は全文をGoogle Booksで閲覧することができる
初期の製品は消費者のニーズを十分に汲み取っておらず、多少不便でも使い続けるアーリーアダプターと呼ばれる初期採用ユーザーのデマンドに応えていくことによって、徐々に高い性能をもった製品に磨き挙げられていく。この時期は機能を増やすなど、パフォーマンスの向上を図るわけだが、一般ユーザーが必要としているパフォーマンスまで達した時点でユーザーのニーズは大きくシフトする。
初期では機能を重視していたのが、一般ユーザーが求めているニーズを超えると、機能はそれほど重要ではなくなり、利便性、安定性、そして低コストのほうを重視し出すようになる。新しもの好きで実験精神が旺盛なアーリーアダプターは、より多くの機能を求める傾向があるが、一般ユーザーは安定して信頼性のある(世に広まっている)テクノロジーのほうを選ぶ傾向がある。また、利便性やトータルな意味での満足感といった機能を付け加えただけでは提供することができない体験を求めている。テクノロジーと機能面はある程度のところまで高め、利便性や安定性といった技術的ではない部分にシフトした製品が、多くの人々にに利用されているのではないだろうか(画像1)。
それでは、iPhone/ iPod touchはどうだろう。