財務会計と管理会計--工事進行基準はプロジェクト管理体制を見直す契機(後編)

木村忠昭(アドライト)

2009-02-20 08:00

前編はこちらです

精度の高いプロジェクト管理は管理会計上でも有益

 次に、工事進行基準の管理会計上の側面、つまり法令などで定められているわけではないが、経営を行ううえで必要となる管理体制に着目したい。「工事契約に関する会計基準」に準拠するためには、工事収益総額と工事原価総額、そして工事進捗度を高い水準で見積もったうえで工事進行基準を適用する必要があるが、そのためには精度の高いプロジェクト管理体制が求められ、それは経営管理上も有益であるからだ。

 たとえば、各プロジェクトからいくら利益が出るのかを高い精度で予測することは、企業経営に必要な意思決定を行ううえで、当然に欠かせない情報となる。将来の不確実性に対応していくためには、現時点での企業の状態を適切に数量化したうえで、“先読み”による経営を行う必要がある。そのためには、赤字プロジェクトの削減やプロジェクトごとの損益をタイムリーにモニタリングできる体制の構築、また、開発作業の効率化によるコスト削減といった課題を実行していくことが必要となる。

 赤字プロジェクトを削減するためには、プロジェクトごとの現在の損益の状況と将来の損益の着地予測を適時にモニタリングし、赤字の発生が予測される場合には、工数設計の見直しや追加請求の検討など、必要な対応策を迅速に行うことが求められる。このような管理体制は工事進行基準適用のための前提であり、工事進行基準の対応を進めることは、赤字プロジェクト撲滅のために有益であるといえる。

 また、開発作業の効率化という意味においては、アプローチ方法として二つ考えられる。まず一つが、直接作業、すなわちプロジェクトの開発に直接関わった作業工数のモニタリングである。もう一つが、間接作業、つまりプロジェクト開発には関わらない、手待ちや準備の工数の見直しである。これは原価計算体制とも密接に関わってくる問題であるが、直接労務費と間接労務費を細かくモニタリングできる体制の構築が、さらなるコスト削減のためには有効であろう。

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