かつては失敗プロジェクトの代名詞のように言われたCRM。しかし、Salesforce.comの台頭もあってか、現在は市場に急速に浸透しつつある。とくにここ最近の不況下では、企業は顧客との良好な関係性を維持し、継続的な売り上げの向上につなげたいと考えている。
今回、Oracle OpenWorld Tokyoの開催に合わせて来日したOracleのCRM製品担当シニア・バイス・プレジデント アンソニー・ライ氏に、グローバルのCRMのトレンドや、Salesforce.comとOracleの戦略の違いなどについて話を聞いた。
国内ユーザーの懸念をオラクルのCRMは払拭できるのか
SaaSは市場で認知されつつあっても、日本の顧客は保守的でありSaaSにさまざまな懸念を持っている。Oracleのサービスはこの懸念を払拭できるのだろうか。
ライ氏は、データを海外に置くことを懸念する顧客がいることは理解していると言う。国や業界ごとにルールが異なるので、SaaSであってもそれらに柔軟に対応する必要があるとの認識だ。
Oracle CRM On Demandのアーキテクチャは、他のSaaSとは大きく異なっており、どのような形態でも利用できる。顧客のデータセンターでもいいし、顧客のパートナーが運用するデータセンターでもいい。もちろんOracleのデータセンターでもよく、仮にインフラが分散化されていても統合して運用することも可能だという。
さらに、現状では米国以外にも、シンガポール、スイス、イギリス、ドイツにデータセンターを設置しており、顧客の要望に応じこれらを自由に選択して利用できる。
このあたりのサービス展開の幅はSalesforce.comがなかなか追随できないところだと述べている。
Salesforce.comに対する圧倒的優位はアーキテクチャの違い
そのSalesforce.comは、従業員数名程度の極めて小規模のユーザーにも積極的にサービスを展開している。
一方、Oracle CRM On Demandは、SaaSでありながら大企業を中心に展開しているように思える。
同じOn Demandのサービスでありながら、両社のサービスには何か根本的な違いがあるのだろうか。ライ氏の説明はこうだ。
OracleはITシステムを戦略的に捉えている企業を中心に製品を販売している。その結果、Oracle CRM On Demandの顧客がたまたま大企業に集中しているというだけのこと。製品の使いやすさという面では、Salesforce.comとOracle CRM On Demandは、なんら変わるものではない。
その上でライ氏は「Oracle CRM On Demandにも独自の優位性はある」とつけ加える。
高いサービスレベルを求めるユーザーにオラクルはどう応えるのか
ライ氏がまず挙げたのは、分析環境やデータウェアハウス機能がバンドルされている点だ。さらにOracle E-Business SuiteやJD Edwards、SiebelやSAPなどさまざまなシステムと容易に連携、統合できるというのも大きな優位性だと主張する。
これらに加えられる価値としては、マルチテナントだけでなくシングルテナントでも利用できる基本的なアーキテクチャの違いの部分だと言う。これにより、仮に高いサービスレベルを求める顧客がいたとしても、シングルテナントのサービスを勧めることで柔軟に対応できる。
さらに、Oracle CRM On Demandでは、さまざまな機能的革新も行っている。ソーシャルCRMの機能はその代表例だとライ氏はいう。これらを一体して提供できることで、結果的には大きな価格のアドバンテージも生まれると主張している。
「仮にSalesforce.comでOracleと同じような構成にしようとすれば、2〜3倍の費用が必要になるはずだ」とはライ氏の指摘だ。
さて、ここまでは日本国内のユーザー、あるいはユーザーになる可能性のある企業の目線で話を聞いた。次のページではCRM市場について、ライ氏に語ってもらっている。