電気自動車に乗って考えたスマートフォンのこと - (page 2)

三国大洋 2012年09月28日 14時23分

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想定外の渋滞 目減りするバッテリーがストレスに

 今回の遠出で「高速での事故渋滞」というものに、たぶん初めて遭遇した。

 過去の(そう多くはない)経験から、年末年始や旧盆といったピークの時期でもないかぎり、また首都高速などとは違って、地方に伸びる高速道路では「渋滞」の表示が「時速30kmくらいで流れていること」だと思い込んでいた。

 だが、そうした勝手な思い込みを砕くように、クルマの列がまったく動かない……動いても「牛歩」程度という状態がしばらく続いた。これがまず最初の「想定外の出来事」で、後につづくバッテリの心配やカーナビ(の精度)について改めて痛感させられる引き金となったと思える。

 高速道路の入り口前からすでに渋滞の列ができていた。高速に上がっても、混雑が解消し、車間距離が広がるまでにしばらく時間がかかった(たぶん一時間以上)。これも当たり前のことだが、通信網とは違い、物理的な道路の場合は混雑の様子が目に見えるだけ迷う余地も少ない。前方にぎっしりとクルマの列が伸びているのを目にすれば、もはや「路肩走行でナントカ」といった年齢でもない自分には、いちばん近くのICで高速を下りるか、それとも諦めて時間が解決するのを待つか、という2つの選択肢しかない。そうしてまた、遠くの目的地を目指すというこの状況では、前者の選択肢が事実上ないに等しかった(よしんば同じくらいの時間で着けたとしても、知らない土地の一般道をいくというのは、あまり魅力的とはいえない)。

 約束の時間に到着することを早々に諦め、「のんびりいこう」と気を取り直したのもつかの間、今度は思いの外はやく目減りしていくバッテリー残量の表示が気になり始めた。おそらく「適確な情報提供が必須」というメーカー側の考えがあるのだろうが、航続可能距離が「あと80キロ」といったあたりでさえ小刻みにその距離が短くなっていくのを目にするのはあまり精神衛生にいいものではない。

 スマートフォンのバッテリ(電気)を長持ちさせるのに、たとえば「(常に基地局やWi-Fiアクセスポイントを探す)無線アンテナや、Bluetoothをオフにしておく」といったようなティップスがわりとたくさんあることは周知の通り。それと同様に、EVにも走行距離を伸ばすための「運用上の工夫」といったものがたくさんあることを、このドライブの最中に学んだ。けれど、出だしの頃は通常のガソリン車やハイブリッド車と同じつもりで運転していたので、「あれ、もうこんなに……」と思えるほどバッテリの残量が少なくなっていった。

 ここでちょっとイヤな感じがした……。イヤな感じがはっきりとしたのは、バッテリの減り具合よりも、むしろスピードメーター下に表示される「100%充電するまでにかかる所要時間」が「200V電源で5時間30分、100V電源で12時間」とかになっていることに気づいた時だったかも知れない。

 バッテリ節約に役立つ「Ecoモード」というのがあることを思い出したのは、しばらくたってからのことで、これに切り替えてからかなりストレスが減った——後から思うと随分と助けられたのかもしれない。ただし、これに気づかされた成り行きというのがちょっと衝撃的でもあった。やっと渋滞の列を抜け、「さあ、これから挽回だ」とアクセルを踏み込んでまもなく、「(このままいくと)目的地に到達できない可能性があります」という女性の声がカーナビから聞こえてきたのだった。

 このメッセージの中味を理解するまでに少しだけ時間がかかった。そして、その意味を理解したのとほぼ同時に、「スエズ運河をめざして沙漠のなかを進むアラビアのロレンス一行」みたいな絵が頭のなかに浮かんできて、額から不快な汗がにじんできた。

 幸いなことに、リーフのカーナビについている地図には、各地にある充電装置の設置場所がデフォルトで表示される。はじめのうちは「すでにずいぶんたくさん(充電スポットが)できているんだな」と呑気に眺めていたこの情報が、この時点でにわかに重みを増してきた。そして、ある重大なことに気づく。画面上に表示されたディーラーなどに置かれた充電スポットの大半が、200Vの電源しかないことに。

 この時点で「最悪の場合、途中で高速を下りて最寄りのスポットで充電すれば……」という考えが一挙に吹っ飛んだ。「知らない土地で日が暮れる」という目には遭いたくなかった。なんとか持ちこたえながら、急速充電装置のある所にたどり着かなくてはいけない……そう思って、目的地に近い高速の出口からわりとすぐのところにあるディーラーの情報を調べた。たしかに急速充電装置がある。そのことを確認して少し安心すると、カーナビの目的地をこのディーラー店舗に設定し直した。「目的地までの距離30km、残りの走行可能距離33km」というような、なんとも心細い表示をしばらく眺めつつ、その後は文字通り「そろり、そろり」とクルマを走らせた……。

 iPhone 5の発売前後に「アップルがバッテリの駆動時間を気にして、LTE網への対応について『機が熟すのを待った』」云々という話がいろんなところで報じられていた。LTEという「高速道路」を走れるといっても、航続可能距離(=利用可能時間)が目に見えて短くなってしまっては意味がない。この判断がかなり重要なものだったということに、今回のEVドライブであらためて気づかされた。

 ふだん外部バッテリ(充電池)を持ち歩いている人でも、時には忘れて外出してしまうことがあるだろうし、また出先から仕事上の重要なやりとりをしなくてはならない状況に置かれる人も少なくはないだろう。また、たとえば米国でデュラセル・パワーマットが展開し始めているような「Wireless Power Hot-Spot」——非接触型のモバイル端末用充電器がテーブルやカウンターなどに組み込まれて置かれている場所——が今後広く普及するかどうかはまだわからないし、たとえ普及するにしてもしばらく時間がかかる。そう考えると、駆動時間の長さを犠牲にしてまで処理速度や通信速度といった「速さ」を優先する選択は、やはりほぼありえないものと思えてしまう。

 話の順番が前後するが、無事たどり着いた日産のディーラーで利用した急速充電装置にはとても感心したことを先に記しておく。事前に「100%充電までの所要時間30分」などという情報を目にしていたが、実際に使ってみると、残り5%くらいのところから50%を超えるまでにだいたい10分程度しかかからなかった。急速充電などの電源技術の恩恵だ。装置に付属したタッチパネル兼用の画面をみていると、400Vくらいの高圧電流にしてガンガン充電しているのがわかる(iPad用の電源アダプタにつながったUSBケーブルを、間違えてiPhoneに差したときにあっという間に充電できてしまったことを思い出した)。

 ディーラーの若い女性スタッフの話では、「80%くらいまではわりとすぐ充電できるんですが、その先がちょっと時間がかかりますね」とのことで、そんなところにもスマートフォンとちょっと似たところがあることを知った。

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