本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、SAS Institute Japanの吉田仁志 代表取締役社長と、SAPジャパンの安斎富太郎 代表取締役社長の発言を紹介する。
「アナリティクスを日本企業のイノベーションの原動力に役立てたい」
(SAS Institute Japan 吉田仁志 代表取締役社長)
SAS Institute Japanは2月19日、2013年度のビジネス戦略を発表した。吉田氏の冒頭の発言は、その発表会見で明らかにした同社の2013年度のテーマである。
吉田氏は会見でまず、2012年度のデータ分析市場を振り返り、「まさにビッグデータ元年。ビッグデータをビジネス価値に変えようと、これまでにも増してアナリティクスに注目が集まった」との認識を示した。
そうした中で、SASの2012年度のグローバルの売上高は前年度比5.4%増の28億7000万ドルと、37年連続で増収を記録した。特に地域別では、吉田氏が統括責任者を兼務する北アジア地域(日本、中国、韓国、台湾、香港)の成長率が最も高かったという。

SAS Institute Japanの吉田仁志社長
その勢いをさらに加速させるべく、吉田氏が2013年度の日本法人のテーマとして打ち出したのが、冒頭の発言である。同氏はそのココロを、「日本企業がこれからイノベーションを起こしていくためには、いわゆるゲームチェンジの発想が求められる。アナリティクスはそれに向けて必ず役に立つ手立てになる」と説いた。
2013年度のビジネス優先事項としては、「SAS Visual Analyticsによって顧客をBI(ビジネスインテリジェンス)からBA(ビジネスアナリティクス)にシフトさせる」「SAS High-Performance Analyticsの業種・業務展開」「アナリティクス・コンサルティングの拡充」「データサイエンティスト育成のための大学との連携」「パートナーとの協業の強化」といった5つを挙げた。
この会見では、ビジュアルデータ探索ソフトであるVisual Analyticsの最新版も発表された。その内容については、すでに報道されているので関連記事をご覧いただくとして、ビジネス優先事項の説明で興味深かったのは、「顧客をBIからBAにシフトさせる」との発言だ。吉田氏によると、過去を分析するだけのBIから、それを踏まえて未来を予測するBAへのシフトを促進したい、ということのようだ。
あらためて、データ分析市場というのは、IT業界では10年ほど前からBI市場、そして数年前からはBA市場ともいわれているが、その歴史からみると、SASはまさに老舗で、今も独立系専業ベンダーとして市場をリードしている希有な存在である。
だが、ここ数年でこの市場には、IBM、Oracle、SAP、Microsoftといったビッグベンダーがこぞって本格参戦してきた。かつてはSASと同様、有力なBI専業ベンダーが群雄割拠していた時期もあったが、相次いでビッグベンダーに買収された経緯がある。その理由は、まさしくデータ分析市場がビッグデータ活用の主戦場になってきたからだ。