モノのインターネットの衝撃

モノのインターネットの衝撃

怒賀新也 (編集部) 田中好伸 (編集部) 2014年01月01日 00時00分

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選手の疲労をチップで把握

 「彼に疲れが見えるので、交代させて試合のリズムを変えよう」

 サッカーのドイツブンデスリーガ、TSG 1899 Hoffenheim(ホッフェンハイム)では、選手が、すねを守るためにソックスの内側につけているレガースに通信機能つきのセンサチップを付け、チップから情報が送られてくるようにしている。足が重くなればそのまま数値で把握されてしまうため、選手としてはいささかプレッシャーを感じるかもしれない。その情報を把握して、監督が采配に生かしている。

 Hoffenheimは、選手の疲労の把握だけでなく、スタジアムの鉄柱などさまざまな場所にチップを取り付け、試合中を含めてさまざまな角度から無数の情報を集めている。それをSAPのインメモリデータベースである「HANA」を使ってリアルタイム分析し、試合の状況の把握や選手交代などに役立てているのだ。

[ドイツブンデスリーガのTSG 1899 Hoffenheimでは選手がレガースに通信機能つきのチップを付けている]


Internet of Thingsとは何か

 2014年の元日を迎えた。テクノロジはどんなテーマを持ち、どんな方向に進んでいくのか。ZDNet Japanは、1つのキーワードに注目する。「Internet of Things(IoT)、モノのインターネット」と呼ばれている領域だ。

 人と人の通信から、人と機械、さらに機械と機械が通信し、プロセスを自動化させるM2M(Machine to Machine)に注目が集まっており、IoTはそれをベースに語られることが多い。これまでネットワークとは無縁と思われていたようなモノがネットワークとつながることで、従来型ビジネスの効率化だけでなく、新産業の出現、消費者の新たなライフスタイルの登場などが期待されている。

 「サッカーの監督向け情報サービス」もその1つかもしれない。自動車の自動運転技術や車両の管理なども有力だ。「未来のクルマ」に向けて、すでにトヨタ自動車や日産自動車などが、大手IT企業と共同でIoTに取り組んでいる。

 自動車を「端末」に見立て、モバイルネットワーク上で複数の自動車を管理することで、リアルタイムの輸送状況を把握。より多くの荷物を最短時間、最短距離で運ぶような輸送計画を自動的に立てるといったサービスも、実現している。

自動車がネットワークにつながることで新たに生み出されるサービスはさまざま
自動車がネットワークにつながることで新たに生み出されるサービスはさまざま

日本での市場規模は76兆円

 来客、需要などの「予測」は、これまでのITが絶えず突き付けられてきた要求だった。だが、モノのネットワーク接続とリアルタイムの分析技術が、発想を根本的に変えるかもしれない。予測するのではなく、現実に起きている事柄を基に、計画を立てる――この転換の影響範囲は計り知れない。産業機械やサプライチェーンの仕組みといった企業側にとどまらず、消費者も巻き込む。小売業なら、店舗への顧客の来店を検知し、顧客のスマートフォンに向けてリアルタイムのプッシュ型キャンペーンを打つといった取り組みが想定されている。

 モノのインターネットが生み出す影響の大きさは、予想されている経済規模に一端が表れている。米IDCは、2020年におけるIoTの予想市場規模を8兆9000億ドル(約900兆円)と予測。センサ、ネットワーク、モバイル、リアルタイム分析技術が集まることで、ITの担当範囲は、既存のIT部門のものを軽く越え、産業を横断すようなものになる。

シスコシステムズの社長、平井康文氏。今年2月には新経済連盟でM2Mのワーキンググループを立ち上げる予定だ
シスコシステムズの社長、平井康文氏。今年2月には新経済連盟でM2Mのワーキンググループを立ち上げる予定だ

 シスコシステムズは、IoTの発展形として「Internet of Everything」を打ち出している。独自試算で、世界でのその経済価値を2013年から10年間で14兆4000億ドルと算定。日本市場では、うち5%の7610億ドル、日本円で76兆1000億円が生み出されるとする。

 76兆1000億円の内訳は、資産の使用効率が8兆1000億円、社員の生産性が4兆6000億円、サプライチェーンが18兆1000億円、顧客、サービスが21兆3000億円、イノベーションが23兆9000億円だ。これを、導入事例の側面から見ると、製造業の工場における「スマートファクトリー」が13兆9000億円、つながることによる「マーケティングや広告」が10兆7000億円、「製品開発イノベーション」が7兆1000億円、「スマートグリッドや省エネルギー」が5兆8000億円という上位4分野を挙げている。

 シスコシステムズの社長、平井康文氏は、工場、小売業、特に「医療と教育に期待している」と話す。電子カルテやテレビ会議システムなどを用いた遠隔医療により、地方の医療環境を改善していきたいとしている。

 インターネットに接続する装置をインストールベースで数えているというIMS Researchによると、2010年のインターネット接続端末数は50億だった。シスコの予測では、2015年には250億、2020年には500億に達する。

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