意外と縦に長いベトナム
これまでの連載記事でもベトナムの「南北」について触れてきましたが、今回はもう少し詳しくみてみたいと思います。
ベトナムというと、さんさんと照りつける太陽の下、菅笠を被った男女の光景が思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか。このような「ベトナム=暑い東南アジアの国」という印象は、半分は正しいものですが、実はそうでもない点面あります。そこで、ベトナムの大まかな地理を把握するために、国土を概観してみましょう。
ベトナムは、国土の南北で約1650kmあります。主要都市としては、北部に首都のハノイ市、南部にベトナム最大の都市のホーチミン市がありますが、この2都市を移動しようとすると飛行機で約2時間かかります。日本に置き換えると羽田空港から福岡空港までが同じく約2時間です。
しかし東京と福岡間を考えた場合でも、関東、東海・北陸、近畿、中国、九州の各地方と地域が存在するように、ベトナムでも、ハノイのある紅河デルタ地域、中北部、中南部、ホーチミン市のある東南部と、各地域が存在します。しかも、東京と福岡間のように東西に移動するのとは異なり、この距離を南北で移動することになります。
日本では、羽田空港から新千歳空港まで空路で約1.5時間となります。東京と北海道では、一年を通じた気候や文化で大きな違いがありますが、ハノイ市とホーチミン市はこれ以上の距離があるのです。そのため、同じベトナム国内とはいえ、気候や風土といったさまざまな点で大きく変わってくることは容易に想像できます。
北部ベトナムでは、ダウンジャケットが重宝する!?
東南アジアの国でダウンジャケットが必要なのかと疑問を持つ方もいると思いますが、特にハノイ市を中心とする北部ベトナムでは、1月から3月の冬には冷え込みが強まり、日本人でも厳しく感じられる時があります。気温自体は東京のように0度近くまで下がるということはなく、下がっても10度程度ですが、「骨身に染みる」と言ってもいいくらいの冷え込みに感じることもあります。気温の変化を読み間違え、「薄着しか持たずにハノイ市に出張し、暖房の入らない安宿でガタガタ震えて寝るに寝られない」というような、およそ東南アジアとは思えない目に合うこともあります。
そしてベトナムの庶民の足と言えば、もちろんバイク。ダウンジャケットのポケットに片手を入れた格好でアクセルだけを握り、縮こまってバイクに乗らなければいけない辛い時期でもあります。ベトナム人たちは「湿度が高いまま気温が下がるから冷え込みが厳しくなる」と言うのですが、真偽のほどははてさて……(なお、これほど寒くなるハノイとはいえ、小学校には暖房が完備されているわけではありません。そのため、10度を切るようなことがあると、校長先生の判断で臨時休校になることもあります)。
また、3月にかけて、北部ベトナムに位置するハノイ市では、霧がかかるとともに霧雨が続くことがあります。このような天気が続いてくると次第に寒さも和らぎ春が訪れる証拠。東南アジアらしいねっとりとした暑さが、もう間もなく戻ってきます。
ハノイの冬ではタートルネックや上着が必須。2月のハノイ・ノイバイ空港にて。