ハリウッドとの関係を構築へ
10月下旬に出ていたBloomberg記事には、中国のオンラインビデオ配信市場の規模について、今年の178億元(約29億ドル)から3年後の2017年には366億元まで拡大するとの調査会社IResearchの予測が紹介されている。
この記事と同時期に出た上記のビデオの中では、ゲストコメンテーターの1人(Gordon Changという名前の年輩の人物)が「中国の小売市場は実際にはすでに頭打ち(フラット)だから、Alibabaとしてはまったく新たな収入源を作る必要がある」といった見方を披露してもいる。
だが、歴史に残る大規模な株式公開(IPO)で潤沢な資金を手にしたAlibabaが、大きな成長を期待できる新分野に本格的に進出しようとしている、というだけでは、それほど面白いネタとも思えない。ただ、そこに「Dalian Wandaでもハリウッドとの関係づくりを積極化している」というネタが加わってくると、この両社の動きに関する話ががぜん面白くなってくる。
ひとつの可能性として思い浮かぶのは、Alibabaにとって映画配信事業は単なる“新たな収入源”に留まらず、Dalian Wandaの運営する映画館や(それを中核テナントとする)ショッピングモールに足を運ぶ消費者を奪うことにも役立つ可能性がある「一粒で二度美味しい」商売のネタ、ということ。
あるいは、Alibabaが提供している「Tmall Magic Box」というSTBを家庭内に入り込んだ“仮想のショッピングモール”と見ることもできるかもしれない(Bloombergによると、Magic Boxではテレビ番組や映画作品が観られるほか、ゲームができたり、買い物もできたりするという)。
そうして、この仮想ショッピングモールとリアルなショッピングモールとの戦いで重要な鍵となるのがハリウッドのコンテンツで、両社とも配給、配信という“川下”から作品製作という“川上”にそれぞれ踏み込もうとしているということにも思える。
前述のBloomberg記事には、Dalian Wandaがハリウッドに拠点をつくるために8月にビバリーヒルズで土地を押さえた、という一節がある。
同社が昨年9月に、中国の青島に大規模な「映画村」――Qingdao Oriental Movie Metropolisという名前の複数の映画スタジオや宿泊施設も含む一大アミューズメントパークを建設すると発表した際には、俳優のLeonardo DiCaprioやNicole Kidmanといった有名人に加えて、大手エージェントのCreative Artists Agency(CAA)の関係者もわざわざ発表の場に足を運んだとして、ちょっとした話題になっていた。
一方、Jack Maが訪米中にプロバスケットボールリーグ(NBA)のLos Angeles Lakersシーズン開幕戦を観戦した際には、CAAと競合するWilliam Morris Endeavorのトップ2人がMaをアテンドしていたというWSJ記事も目にした。
有力なショッピングモール運営者とオンラインモール最大手との争いがこれからどういう展開になるのか。場合によっては中国でも「ショッピングモールの空き物件を利用したデータセンター」が登場し、増えることになったりするのか(高級ブランドのテナントを当て込んで作られた物件がそれでペイするとも思えないが)…。巨大市場を舞台に進む、消費者の可処分所得/可処分時間をめぐる戦いが興味深い。
(敬称略)
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【参照情報】
- Malls Fill Vacant Stores With Server Rooms
- China's Shopping-Mall Spree Could Prove Costly
- China's Former Richest Man Once Bet Jack Ma $16 Million Over Online Sales In China
- Softbank's Son Predicts More Hits After $87 Billion Alibaba Payoff
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