モバイルデバイスへの攻撃の多様化--iOSを狙った攻撃の出現
これまでモバイルデバイスを狙った攻撃はAndroidを対象とするものが多いと説明してきましたが、アプリに対するガードが固く、日本でも利用ユーザーが多いiOSを狙った攻撃も現れ始めています。
パロアルトネットワークスの研究チームがその存在を発見したマルウェア「WireLurker」もその一例です。WireLurkerはこれまで安全と見られていたジェイルブレイク(脱獄)していないiOSデバイスへ攻撃を行う、初めてのマルウェアです。
WireLurker はMacユーザー向けのアプリストアで公開されていたアプリに挿入され、アプリをダウンロードしたMacを感染させた後にUSB経由でiOSデバイスに侵入します。WireLurkerの被害は主に中国に留まっていますが、WireLurkerに感染したMACアプリはこれまで35万回以上ダウンロードされ、数十万のユーザーに影響があったと見られています。日本は同様の攻撃が発生しづらい環境ではあるものの、他の攻撃手法と組み合わせることで、このようなiOSデバイスへのマルウェア被害が日本でも起こる可能性は多いにあります。
AndroidやiOSを搭載したモバイルデバイス上では、Windows PCと同じくファイル共有アプリやTorのような匿名プロキシツール、VPNクライアントソフトなどが利用できます。そのため悪意ある情報漏えいや経路途中でのセキュリティをバイパスすることが可能です。
また、PCに比べて持ち運びが容易であり、カメラによる撮影や録音などが手軽であるため、PCとは異なる経路で情報漏えいが発生する恐れもあります。
また、モバイルデバイスの管理は複雑化し、従業員が会社の管理下にないIT機器を業務活動に利用するシャドーITにより、発売前の製品情報が漏れるといった知的財産の漏洩問題が発生しやすい状況でもあります。
後編は、モバイルデバイスを安全に利用するための、最新のセキュリティ製品やサービスでの対応方法について解説します。
- 三輪 賢一
- パロアルトネットワークス合同会社 外資系ネットワークおよびセキュリティ機器ベンダのプリセールスSEを15年以上経験。現在は次世代ファイアウォールおよびエンタープライズセキュリティを提供するパロアルトネットワークスでSEマネージャーとして勤務。主な著書に「プロのための図解ネットワーク機器入門(技術評論社)」がある