プライベートクラウドが力を発揮できる領域
パブリッククラウドの成長率が勝っていたとしても、プライベートクラウドはRed Hat(そして他のベンダー)に利益をもたらしている。2015会計年度第4四半期決算の電話会議で同社幹部らが述べたところによると、同四半期の大きな取引のいくつかには「OpenStack」に関する案件が含まれており、「上位30位以内の取引にOpenStackや『OpenShift』が登場する回数は、前年同期と比較すると3倍に達している」という。
その理由はどこにあるのだろうか?
Whitehurst氏によると、「パブリッククラウドは大規模環境では途方もなく高価である」ためだという。
同氏は、5月下旬のインタビューで、「使用量が大きく増減しない」ワークロードではプライベートクラウドがずっと理にかなった選択肢だと述べている。
使用量が大きく増減しないアプリの場合、大企業の顧客の多くはパブリッククラウドよりも自社のデータセンターで運用した方がずっと安価になると述べている。AWSの販売利益に目を向けると、原価と実際の課金額の差である利ざやの大きさを実感できるはずだ。
AWSのデータ科学担当責任者Matt Wood氏の発言(「柔軟性があり、ビッグデータの要求にあわせて迅速に対応できる環境が必要だ」)を筆者が指摘しても、Whitehurst氏の意見は変わらなかった。そして同氏は「規模が大きく、ワークロードが大きく増減しないのであれば、開発やテスト試行が終わった段階で、自社のデータセンターで運用するのがよいだろう」と述べた。
言い換えれば、まずAWSを採用するものの、最終的にはデータセンターに落ち着くのが理にかなっているというわけだ。
AWSが開発やテストといったワークロードにとどまらず、(ずっと)多くの用途で採用されているのは間違いないが、クラウドの採用においてWhitehurst氏が述べたような流れをたどる企業も存在している。筆者が以前にも書いているように、Etsyはパブリッククラウドの世界を離れ、自社データセンターでの運用を決断した「クールな新興企業」だ。こういった企業は他にも出てくるはずだ。
結局のところ、Whitehurst氏が指摘しているように、「AWSの販売利益に目を向けると、それは極めて大きなものとなっている」ため、企業が低コストでワークロードを運用するための自由度は大きくなっているわけだ。